葬儀の互助会とは?メリットやデメリットも紹介
冠婚葬祭は一度にまとまった費用が必要になることが多いのですが、「互助会」という制度を利用して積み立てておくことで、葬儀についても出費を軽減することが可能です。
一方で、葬儀の全額が互助会でまかなえるとは限らず、認識違いによって、自分が想定していたより多くのお金を請求されてしまうというトラブルにつながる事例もあります。
今回は、葬儀の互助会に関する基本的な知識、加入するメリットやデメリット・注意点などについて解説します。
葬儀の互助会とは
「互助会」という用語自体は広い意味を持ちますが、本記事では「冠婚葬祭互助会」について解説します。
葬儀の互助会とは事前に費用を積み立てて備えておくサービス
冠婚葬祭互助会とは「定期的に一定額の掛け金を事前に前払い(積み立て)しておくことで、いつか訪れる結婚式や葬儀の際、契約に応じた商品・サービス提供を受けることができるシステム」のことです。
毎月の支払額は1000円~5000円程度で、支払いの回数も30回程度の短期間のものや、80回と長期間で払ったりとさまざまです。
また全額を一括払いで支払うことのできるものもあります。
契約に応じて提供される商品・サービスは、一般的には葬儀に係る全てというわけでなく、祭壇、棺、骨壺、受付用品、司会進行などの、どのような葬儀スタイルでも基本的に必要と想定される葬祭用品やサービスが対象範囲となっています。
掛け金や契約期間、利用時に受けられるメリット、付帯の会員特典は、互助会を運営する会社ごとに異なりますので確認するようにしましょう。
なお、冠婚葬祭互助会の始まりは、戦後にさかのぼります。
1948年、日本初の互助会は横須賀で誕生しました(横須賀市冠婚葬祭互助会)。敗戦直後の日本では、多くの人々が貧困に苦しみました。物資不足という状況の中で、花嫁衣裳や葬式用具を、皆で拠出し合った資金で購入し、順番に使用していこうという相互扶助の考え方からスタートしたのが互助会のシステムです。
営業許可のある企業だけが行える事業
冠婚葬祭互助会事業は、割賦販売法の前払式特定取引業に該当します。
このため、互助会事業を行うには割賦販売法に基づいて、経済産業省の許可を受けなければなりません。
許可を受けるためには、集めた掛け金の保全措置が必要な他、財務内容、事業計画、市場における競業状況、約款の内容、相談窓口の設置など、厳しい審査項目をクリアする必要があります。
葬儀の互助会に入るメリットとデメリット・注意点
互助会加入のメリットとデメリット、注意点について確認していきましょう。
互助会に入るメリット
まずは、互助会に入るメリットを紹介します。
出費を緩和できる
葬儀は突然発生することがあるだけでなく、まとまった費用が必要になります。急な出費は、家計にとって痛手となることも多いでしょう。
互助会に加入して事前に積み立てておくことで、急な出費を緩和できます。
葬儀費用を抑えられる
互助会の会員と非会員を比べると、同じ葬儀内容で行うのであれば、互助会会員の方が安価に葬儀を行うことが可能です。
(例)非会員への提供価格が36万円のサービスを、互助会に入っていれば積み立てた満額20万円で同様の葬祭用品・サービスの提供を受けることができる。
家族の葬儀でも使える
子供名義で互助会に加入しておき、親の葬儀で利用することができます。
ただし、利用範囲については互助会の運営会社によっておのおのが定める規約によって異なります。
結婚式でも利用できる
葬儀が発生しない場合や、普通に葬儀を行わない場合など、葬儀ではなく結婚式で利用することも可能です。
互助会の権利を譲渡できる
互助会に加入し掛け金を納めると、冠婚葬祭で利用できる権利を得ることになるのですが、この権利は、家族や友人などに譲渡することができます。
孫に対して「結婚式で使ったらいいよ」と譲渡することもできるということです。
事前に葬儀について考えておける
葬儀の満足度を高めるためには事前相談が必要だと言われています。互助会に加入しておくことで、葬儀について分からないことがあればすぐに相談できますし、会館見学会や事前相談会などにも参加しやすいでしょう。
会員特典を受けられる
互助会に加入していることで本来の葬儀価格よりも割安で行うことができます。
葬儀費用が割引されたり、式場の利用料が無料であったりと、さまざまな会員特典があります。
希望をすれば費用を追加し、内容をアップグレードすることも可能です。
また互助会のサービスは、加入者本人だけでなく家族全員がサービスの対象になる場合もあります。
家族と同居していない場合でも、3親等までや親族間利用申請を行えばサービスが利用可能になる場合があるので確認してみましょう。
互助会が所有していたり準備している式場は、「使ってよかった」と思ってもらえるように設備が充実しています。そのような設備の整った葬儀場や会館を利用することもできるのです。
互助会に入るデメリット・注意点
次に、互助会に入るデメリットや注意点です。
葬儀の全額がまかなえるわけではない
互助会の契約に含まれている商品やサービスは、一般的な葬儀で基本的に必要な内容である場合がほとんどですが、料理や香典返しなど、契約に含まれていない項目もあります。
このため、互助会に入っていれば葬儀代全てがまかなえるものと考えていたものの、いざ葬儀を依頼すると、互助会の契約内容だけでは葬儀を行うことができず、想定以上の葬儀費用が掛かってしまうというトラブルが生じる可能性があります。
積立金のみで葬儀を行うと、規模が小さくなったり、グレードが低い式になるなど、希望の葬儀を執り行うことができない場合があります。
希望の葬儀プランがある場合は、追加料金が必要になると考えておき、場合によっては100万円単位の追加料金が必要なこともあります。
解約すると払った金額全ては戻ってこない
何かしらの事情で互助会を解約した場合、戻ってくるのは、納めた全額ではなく手数料を差し引かれた後の金額となります。
手数料が差し引かれた金額によっては、積み立ての半分程度しか返金されない場合もあります。
納めた金額に対する手数料の割合は、掛け金を納めた回数によっても変化し、互助会の運営会社によって個々に定められています。
万が一途中で解約したいとなった場合にどれくらいの手数料が掛かるのか、加入時には必ず解約手数料を確認しておくようにしましょう。
他の葬儀社には依頼できない
葬儀は、互助会の加入先の葬儀社に依頼することになり、その他の葬儀社へ依頼する選択肢がなくなります。
ただし、例外的になりますが、互助会同士で会員の相互利用が可能となる契約を結んでいれば、互助会の加入先でなくても葬儀を依頼することができます。
互助会加入の事実を知らないまま他の葬儀社を利用するとサービスが受けられない
故人が生前に互助会に加入していた事実を知らないまま、他社で葬儀を行ってしまうというトラブルが起こる可能性があります。
その場合、故人が生前に積み立てていた会費の全額が返ってくることはありません。
使わない部分は権利放棄となる
互助会加入時の契約に含まれていた葬祭用品・サービスについて、部分的に利用しなかったとしても権利放棄の扱いになり、未利用部分の返金対応は基本的にありません。
葬儀の互助会に入る方法とその費用相場は
ここでは互助会に入る方法や費用について見ていきましょう。
互助会に入る方法
入会方法には、主に対面によるものと、オンラインによるものがあります。
対面による方法では、互助会に加入希望である旨の連絡をし、担当者に直接会ってもろもろの説明を受け、申込書への記入および必要箇所への押印、掛け金の支払いなどの手続きを行います。
オンラインによる方法は、インターネットの加入申し込みフォームを通じて手続きを進めます。契約内容に対する同意、支払方法の登録などの手続きをオンラインで行うというものです。
オンラインによる入会は、全ての互助会で対応しているわけではありませんが、最近はオンライン入会に対応している互助会が増えています。
いずれの方法でも、契約後に互助会の加入者証を受け取ることとなります。
積み立て費用の相場
毎月の積み立て費用(掛け金)は互助会によって異なり、月に1000円~5000円程度に設定されている場合がほとんどです。
いくらまで積み立てるのかも互助会によって変わってきますが、満額20万円~30万円程度に設定されている場合が多く見られます。
例えば、2000円を20万円まで積み立てるのであれば、基本的に100回払い(8年と4カ月)で支払っていくことになります。希望によって一括払い、半年ごとのまとめ払いなどもできることがあります。
なお、支払方法は口座振替が一般的ですが、その他、クレジットカード払い、現金集金に対応している場合もあります。
葬儀の互助会を解約する方法とは
互助会でない葬儀社に依頼することにした場合や、手元資金が枯渇し早急に現金を要する場合など、さまざまな事情で互助会を退会する方がいます。
互助会を解約するにはどうしたらよいのでしょうか。
解約書類を互助会の窓口に提出して手続き
互助会の窓口に出向いて解約手続きを行う方法もありますが、まずは互助会に電話で解約をしたい旨の連絡を行い、解約書類を取り寄せ、必要事項を記入した必要書類を同封して郵便で返送する場合が多いです。
その他、自宅などに互助会担当者に来てもらって解約手続きを行うケースもあります。
いずれの方法でも解約書類をそろえて、互助会に提出することによって手続きを行うことになり、手続きが完了次第、指定した預金口座に積立金の返還が実行されます。
必要なもの
解約に際し、一般的には下記のものが必要となります。
- 互助会の加入者証(会員証)
- 解約申込書類(互助会の指定書式に署名捺印)
- 返金の振込先情報の記入用紙(銀行名、支店名、口座番号、名義)
- 本人確認書類(健康保険証、運転免許証、住民票など)
- 加入者本人の委任状
解約は本人以外でもできますが、その場合は加入者本人の委任状が必要です。
互助会によっては、加入者本人に解約の意思があるかどうか確認の連絡がいく場合もあります。
また加入者が亡くなった後に互助会の存在に気付いた場合は、その加入者が除籍されている戸籍謄本または除籍謄本や代理人の戸籍謄本が必要な場合もあります。
解約に必要なものは、各互助会によって異なるので事前に確認しておくようにしましょう。
注意すべき点
互助会の解約時には、話がこじれ、トラブルに発展してしまうことも珍しくありません。そこで、解約時の注意点も確認しておきましょう。
- 解約手数料は契約内容や支払回数(金額)などに基づいて計算されることが一般的です。手数料が差し引かれた金額が返還されるので、満額戻ってくるわけではないことを認識しておく必要があります。満額積み立てていた場合で、おおむね1割~2割程度の手数料が引かれます。
- 解約の希望を連絡しても、解約を極力避けたい立場の互助会が解約の引き留めを強く行うなど、スムーズに解約手続きへと進まない場合があります。また、依頼した解約書類がなかなか送られてこないというケースもあるようなので、対応した互助会の担当者名を確認し、連絡した日時も控えておくことをお勧めします。
なお、強く申し出ることが苦手な方は、家族に同行してもらうなどの対応も検討した方がよいでしょう。
解約手続きを代行してくれる葬儀社や弁護士に依頼するという方法もあります。
互助会側が解約を渋ったり、解約に応じてくれない場合は経済産業省の窓口などに相談しましょう。
最後に
今回は、葬儀の互助会に関する基本的な知識、加入するメリットやデメリット・注意点などについて解説しました。
葬儀の互助会は、相互扶助の考え方に基づき、将来の葬儀のために積み立てを行っておくシステムです。
非会員よりも安価に葬儀を行えるなどのメリットもありますが、やむを得ず解約する場合には満額が戻って来ないなどのデメリットもあります。
互助会への加入を検討されている場合など、今回の内容を参考にしてください。
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