遺言書の書き方や効力などについて
遺言書は財産を持つ人が、死後に希望する分け方を指定するために示した書類を指します。
規定通りの形式で残しておくと、法的効力を持つことから、書き方を知りたいと感じる方も多いでしょう。
不備が出ると無効になる場合もあるので、しっかり遺言書の書き方のポイントを押さえておきましょう。
遺言書とは
まず初めに遺言書について説明します。遺書との違いについても触れていきます。
遺言書とは
遺言書とは、死後に自分の持っている相続財産などを自らの死後にどうするかについて、生前に意思表示をした文書です。
遺言書は「ゆいごんしょ」と読むのが一般的ですが、法律の専門家などは、法律上の効力をもつ遺言書を「いごんしょ」という読み方で扱うことがあります。
適切な書き方を行った遺言書は、法的効力を発揮する重要な書類となり、法定相続人でない方に財産を譲ることも可能にします。
不備があると、せっかく書いた遺言書の効力も無効化するだけでなく、本人の意思とは関係なく民法で決められた法定相続人が遺産を引き継ぐ形になります。遺産を譲りたい方がいるなら、遺言書の規定通りの書き方をしっかり押さえることが大切です。
遺言書を正しく書くために、司法書士や行政書士、弁護士へ相談するのも一つの方法です。
プロの目線で適切な文書を作成してくれるため、無効化することを防ぎます。
遺産がたくさんある方、遺言書作成に自信がない方にお勧めの方法です。
また、遺言書と似ている言葉に「遺書(いしょ)」があります。
遺書は死後のために自分の気持ちを書き残した文書で、特定の相手に向けたプライベートな内容を含んでいることが多くなります。
遺書は内容や形式が自由で制約がないため、故人の遺志として尊重すべきではありますが、法的効力を持つものではありません。
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遺言の種類
遺言(遺言書)は「普通方式」と「特別方式」の二つの方式に分けられます。
「普通方式」には、自筆証書、公正証書、秘密証書の3種類あります。
一方、「特別方式」は普通方式での遺言が作成できない特別な状況下でのみ認められる遺言で、死亡危急者の遺言、船舶遭難者の遺言などの4種類があります。
このように遺言にはいくつかの種類がありますが、このうち一般的に利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つです。
自筆証書遺言について
自筆証書遺言は、遺言を残す本人が遺言書の内容、日付、氏名を全て手書きで行い押印したものです。比較的簡単に作成でき、特別な費用も掛からないことがメリットです。
自筆証書遺言のデメリット
自宅で保管していた場合、紛失や偽造などの恐れがあります。
また遺言書が見つかった際には、確認のために家庭裁判所で「検認手続き」を行う手間がかかります。
これらデメリットへの対策に有効な「自筆証書遺言書保管制度」(法務局で自筆証書遺言を保管する制度)が2020年に新設されていますが、内容までは確認してもらえないため、遺言書の有効性が保証されるわけではありません。もし遺言書の書き方に不備があるなど法的要件を満たさなかった場合、せっかくの遺言が無効になる恐れがあります。
公正証書遺言について
公正証書遺言は、公証人や証人2名以上と確認しながら作成する遺言書です。
法律の専門家である公証人が関与するので、法的効力が無効になることは一般的に考えられません。
なお、公証人は一定の試験に合格していて、法務大臣に任命された権限を持つ方です。
証人は事実を証明する方となりますが、誰でもなれるわけではなく条件があります。
以下の方は、公正証書遺言を作成する上で証人にはなれません。
- 未成年者
- 推定相続人、これらの配偶者および直系血族・受遺者、これらの配偶者および直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人
万が一これらの条件に当てはまる人に証人を依頼した場合、その遺言は無効になってしまいます。そのため身内には証人を依頼しないことが無難ですが、いとこやおじ・おば、おい・めいといった傍系血族は受遺者(財産を贈られる人)でない限り上記には当てはまらないため、証人になることができます。
また、一番安心できるのは司法書士・行政書士・弁護士などのプロに頼むケースです。公証役場で紹介を受けることもできます。
作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管されるので、失くしてしまったり誤って破棄したりすることを防げます。
意図せずに遺言書が発見されるトラブルも避けられるでしょう。
公正証書遺言は裁判でも有効になりやすい信頼性が高い遺言書です。
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットは、自らの財産を公証人や証人に公表しなければならない点です。
身内が証人となるなら、ためらう理由になるでしょう。
また、公正証書遺言を作成するには費用が掛かり、遺言の目的となる財産の価額によって異なります。例えば、200万円〜500万円までならば手数料は1万1000円、500万円〜1000万円までならば手数料は1万7000円になります。
そして、遺贈を受ける人ごとにその財産分の手数料が加算されます。
上記の手数料で、妻へ1000万円、子へ500万円の遺産配分で遺す場合は、
妻への遺産(1000万円)の手数料:1万7000円+子への遺産(500万)の手数料:11000円=2万8000円が手数料の金額です。
ここに財産の総額が1億円未満の場合に掛かる加算分の1万1000円が加わり、最終的な金額は3万9000円になります。これ以外には、証人への謝礼や各種用紙代などの費用が掛かります。
他にも、公正証書遺言は作るのに手間や時間がかかることもデメリットになります。
遺言書を作成する明確な理由がないと、面倒に感じてしまうでしょう。
遺言書があると相続はどうなる?
ここでは、遺言書がある場合の相続方法について紹介します。
遺言の執行
遺言書があると、基本的に記載通りに相続が分配されます。
遺言書の書き方が適切であれば法的効力が発生し、基本的に記載通りに相続が分配されます。
遺言を確実に執行してもらうには、「遺言執行者」を選任しておくことがお勧めです。
遺言執行者とは、遺言内容を叶えるための手続きを実行する人のことで、相続人全員の代理人として手続きを行う権限があります。相続人と遺言執行者が同一であっても法的には問題ありませんが、煩雑な手続きの負担や他の相続人とのトラブルを避けるため、第三者である専門家(弁護士、司法書士など)に依頼しておくと安心でしょう。
遺言執行者の指定は必ずしも必要というわけではありませんが、遺産相続でトラブルが生じる可能性がある場合などは、遺言執行者を選任しておくことで手続きがスムーズに進みます(子供の認知や相続人の廃除・取り消しの手続きには、遺言執行者の指定が必須となります)。
遺言書の中で、既に指定されている場合は、その方が遺言執行者となります。
遺言書を作成したい方で、自分の死後に遺言の内容を確実に実行してほしい場合や依頼したい遺言執行者がいる場合、遺言執行者を指定し、その旨をしっかり記載してください。
なお、遺言書が複数見つかる場合があるかもしれません。
その場合、重複している内容については日付の新しい遺言書が有効となります。
重複していない内容については、日付の古いものも有効です。また、そもそも日付がない遺言書は法的効力が発生しないので注意してください。
遺言書がないと思って相続の手続きを進めても、途中で見つかると記載通りに従う必要があるので、やり直しになります。
二度手間になるので、遺言書は分かりやすい場所に保管することが大切です。
自筆証書遺言を利用する場合は自宅の貴重品入れで保管したり「自筆証書遺言保管制度」を検討したりするなど、保管場所に注意しましょう。
遺留分について
遺留分とは、遺言書の記載内容に関わらず、一定の相続人が一定割合で財産を相続できるように定められたものを指します。
被相続人は自由に遺産の割合を決められますが、遺族の生活保障を目的に一定の制約があります。
遺留分が認められるのは、配偶者、子(孫・ひ孫)、親(祖父母)です。きょうだいやおい・めいには遺留分は認められていません。
相続人が「配偶者のみ」「子供のみ」の場合、遺留分の割合はそれぞれ法定相続分の2分の1、「親のみ」の場合は法定相続分の3分の1です。
「きょうだいのみ」の場合においては、遺留分なしとなります。
例として、遺言書に「相続人ではない〇〇様に全財産を譲り渡す」と記載があった場合、相続人が兄弟のみの場合は全財産を○○さんに遺贈することができますが、配偶者と子供がいる場合は、○○さんに遺贈できるのは2分の1、残りは配偶者と子がそれぞれ4分の1ずつ(法定相続分2分の1の2分の1)を相続することになります。
このように遺留分によって、遺言者が全財産の遺贈を自由に決定できない可能性もあります。
遺言書を見つけたとき(自筆証書遺言の場合)
封がしてある自筆証書遺言を見つけた場合、勝手に開封することは法律違反になり、5万円以下の罰金が課せられることがあります。
自筆証書遺言は個人で作成していることもあってか、改ざん・偽造していないかを疑われやすい遺言書であるため、取り扱いには注意が必要です。
開封は、必要書類などをそろえて家庭裁判所に検認の申し立てをし、検認を受ける必要があります。
検認を受ける上で必要なものは一般的には以下となります。
- 自筆証書遺言
- 遺言書の検認の申立書
- 遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 郵便切手
遺言書の検認の申立書では800円分の収入印紙が必要です。
郵便切手は連絡用に使用されます。
また、自筆証書遺言の検認は申し立てた当日ではなく、指定日に行われます。
検認期日まで自筆証書遺言を開封できませんが、場合によっては1カ月以上の期間がかかります。
遺言書が有効と認められた後、相続の手続きを行う流れです。
なお「自筆証書遺言保管制度」を使って法務局に遺言を保管している場合は、検認が不要となります。
「遺言書」の文字が書かれ、封のされた封筒を見つけた場合、遺された家族は反射的に開封したくなる気持ちを抱きます。
罰金について知らない方も多いでしょう。
遺言書を勝手に開封しただけでは法的効力は失われませんが、他の相続人とのトラブルにも発展する可能性が大きいため、充分な注意が必要です。
もし、内容を改ざん・偽造した場合、法定相続人の権利を失います。
遺言書を見つけたとき(公正証書遺言の場合)
公正証書遺言を見つけた場合、それは写し(正本および謄本)になります。原本は必ず公証役場で保管されているためです。公証役場に行き、原本の内容を確認して、相続の手続きを始めます。
自筆証書遺言のように、家庭裁判所で検認してもらう必要はないのでスムーズな対応が取れます。
万が一勝手に開けても、5万円以下の罰金もありません。
遺言公正証書は正本と謄本を持ち帰って保管できますが、原本が公証役場にあるため、改ざん・偽造の恐れはありません。すぐに相続のための手続きが取れるでしょう。
また、1989年以降に作成した公正証書遺言はデータベースに登録されています。
仮に、遺された家族が正本と謄本を見つけられなくても安心です。
生前は本人しかアクセスできませんが、亡くなった後は遺言執行者・相続人が利用できます。
公正証書遺言を作成しておくと、改ざん・偽造の恐れがないことから、遺された家族がスムーズに手続きを進められます。
費用と手間はかかりますが、自筆証書遺言よりトラブルも起こりにくいです。
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遺言書の書き方
ここでは、遺言書の書き方について紹介します。
自筆証書遺言と公正証書遺言は書き方が異なるため、しっかりポイントを押さえていきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言書の全文や日付、氏名の全てが本人の直筆であることが条件です。パソコンなどで作成したものやコピーは無効となります。
※民法の一部改正(2019年施行)により、財産目録については自書しなくてもよいとされています
用紙やペンの形式は自由です。
コピー用紙、便箋、筆ペン、鉛筆、シャープペンなどで構いません。
また、縦書き・横書きも好きな方法を選べます。
箇条書きにまとめると書きやすく見やすいでしょう。
認印、拇印でも大丈夫ですが、なるべく実印を使うようにしましょう。万が一遺言書の有効性について問題が生じた際、判断材料となる可能性があるためです。
自筆証書遺言を書き終えた後、修正や訂正する場合、その場所を明確にした上で捺印、署名をします。
自筆証書遺言は最も作成が簡単な遺言ですが、書き方や追加・削除の方式が民法で定められています。不備があると無効になる恐れがあるため、作成には注意が必要です。
公正証書遺言
公正証書遺言を作成する場合、まず初めに遺言書の下書きを行ってください。
次に、公証役場に問い合わせ、指定された日時に下書きを持参して内容のチェックを受け、遺言書作成のために必要な書類を確認しておきます。
公証人と打合せをして公正証書遺言を作成する日時を決め、指定日に2名以上の証人と一緒に公証役場に向かいます。
作成後、遺言者、証人2名以上が署名・押印をします。
最後に公証人が署名・押印をして完成です。
また、病気のため遺言者が病院から出ることができない場合、公証人が出張に来てくれますが、その分費用が高くなる点には注意してください。
【まとめ】
遺言書は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」のどちらかの形式で作成するのが一般的です。
自筆証書遺言は全て自筆で問題ないので、比較的作成しやすい印象があります。
しかし、法的要件を満たしていないためにせっかくの遺言が無効になる、という可能性もあります。また、死後遺された家族が手続きを進める際、手間がかかりやすいです。
公正証書遺言は公証人や証人が関わって作成するため、信頼性が高い遺言書です。
しかし、手数料や記載する財産の価額によって加算額が掛かります。
遺言書は適切な書き方で作成すると、遺産の処分に関する事柄について法的効力をもちます。
とはいえ不備が出ると、無効化する場合があるので注意が必要です。
遺産がたくさんある方こそ、公正証書遺言を作成するのがお勧めです。
遺言書の形式ごとのメリット・デメリットを考慮した上で、自身に合う方法を選んでください。
もしものときに備えて、法的効力を持つ遺言書を作成してみてはいかがでしょうか。
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