死亡時の不動産の名義変更手続きとは?必要書類も紹介します
身内が亡くなった際にやらなくてはならない手続きは多くありますが、そうした手続きの中でも特に大変だと思われるのが不動産の名義変更ではないでしょうか。
本記事では、名義人の死亡に伴う不動産の名義変更手続きの流れ、期限、費用相場、相続税との関連などについて解説します。
死亡時の不動産の名義変更について
名義人の死亡時に行う名義変更とは、具体的にどういった意味合いを持つ手続きなのか、また誰が関わり、誰が行うものなのでしょうか。
不動産の名義変更手続きとは
一般に「名義変更」などとも呼ばれる不動産の名義変更手続きとは、不動産を所有している名義人(=登記簿に記載されている不動産の所有権の名義人)を変更する手続きを指します。
別の言い方をすれば、不動産の所有権を別の人に移転するための手続きです。
名義変更手続きは不動産売買などの際にも行われますが、名義人の死亡時に行われる相続人への名義変更は「相続登記」と呼ばれています。
名義変更手続きに関わってくる人とは
名義変更手続きは、名義人本人(共有不動産であれば共有者も)と新たに名義人となる人との間で行うべきものです。
しかし、相続登記では名義人本人が既に死亡していることから、その不動産を相続する権利を持つ人(相続人)全員の同意と署名捺印が必要となってきます。
したがって、相続人全員が名義変更手続きに関わることになりますが、実際にその不動産を相続する人が主導して手続きを進めていくことが一般的です。
名義変更手続きは専門家に委託することも可能
名義変更手続きを行うに当たっては、特別な資格や免許は必要ありません。そのため、関係者自身で行うことに問題はないでしょう。
しかし、慣れない人にとっては容易な手続きとは言えません。手間や時間を省きたい場合や間違いがないようにという考えなどから、専門家に依頼して手続きを任せるケースが多いようです。手続きを依頼することにより、多くある必要書類の全てを収集する煩雑な手間もかかりません。
名義変更の期限と、名義変更を行わない場合の問題点
相続登記(名義人の死亡時に行う不動産の名義変更)に期限はあるのか、また名義変更を行わなかった場合にはどのような問題が生じるのでしょうか。
相続登記の期限
相続登記には明確な期限は定められていませんでしたが、すでに可決されている「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が執行される令和6年4月1日からは、相続登記が義務になります。この法案では、「相続登記の義務化」と「相続登記の期限」が定められています。
現状でも、相続登記を行っていないと、不動産を売却したい時や相続の際に権利がある人が膨らみスムーズに相続ができなくなるなどの問題が出てくるので、相続登記は早めに行うようにしましょう。
※参考:法務省「あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
相続登記にかかる時間
相続登記を申請するに当たり提出が必要な書類には、大きく分けて2種類あります。
- 亡くなった名義人の出生から死亡までの戸籍謄本、固定資産税評価証明書などの市区町村役場や法務局で手配する書類
- 遺産分割協議書、遺言書などの相続人側で用意する書類
もしも、亡くなった名義人が生まれてから亡くなるまで引っ越しをしたことがなく、相続人は同居していた一人息子だけといったようなケースでは、必要書類を準備するのにさほど時間はかからないでしょう。
なぜなら、必要な公的書類は(本籍地と居住地とが異なっているケースを除けば)居住地の市区町村役場へ出向けばすぐにそろいますし、唯一の相続人であれば分割を協議する必要もないからです。
一方、亡くなった名義人の本籍地が遠方の場合、戸籍謄本を手に入れるために本籍地に出向くか郵送で取り寄せることになるでしょう。生前に本籍地を移したことがあれば、複数箇所からの取り寄せが必要です。
相続人が複数いる場合には、遺言書が遺されていなければ遺産分割協議書をまとめるための話し合いが不可欠で、必ずしもすんなりと話がまとまるとは限りません。
一度に集まることができれば、話し合いが数日で終わるとも言えますが、相続人が多い場合はさらに時間がかかります。そのため最短でも1カ月は必要で、それ以上かかることが多いようです。
また、申請書が法務局に受理されてから実際に名義が変更されるまで、通常2~3週間ほど要します。
以上のことを踏まえると、スムーズに手続きを進めることができたとしても、最短でも1カ月程度はかかると考えるべきでしょう。
相続登記を行わない場合の問題点
前述で説明したように、相続登記が義務化されるのは令和6年4月1日からです。
義務化までまだ時間がありますが、相続登記を行わずに放置しておくと、問題が出てくることもあります。
例えば、相続人が亡くなるとその子供や孫などに相続権が移るため、代替わりにより相続人の数が増えていき、相続人全員の合意が必要な相続登記だけに手続きの煩雑さが増していきます。親の代で名義変更されていなかったために、その登録免許税を払うことになるなど、次世代に余計な費用を負担させることにもなります。
また、遺産分割協議も済ませ、実情としては所有していると考えられるような不動産であっても、相続登記が行われていなければ、その不動産は相続人全員の共有財産という状態です。第三者に対し所有権を主張できず、金融機関からお金を借りる際の担保とすることも、売却することもできません。
さらに、二次相続が発生した際に、相続登記をしておかなかったばかりに、その不動産の法定相続分を相続したものとして、法定相続分の不動産評価額を加算して、相続税を申告しなければならないことがまれにあります。
相続登記の流れと必要書類とは
相続登記を自分で行う際に、知っておきたい手続きの流れと必要書類について確認しておきましょう。
登記事項証明書(登記簿謄本)の取得
手続きに漏れがないようにするため、まずは名義変更の対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得し、権利状況を確認しておきましょう。現在の状況を確認するため、故人が亡くなってから取得した登記事項証明書である必要があります。
実質的な所有者が登記簿上の名義人と一致しているとは限りません。亡くなった人がその親の代から居住していた家屋や土地が、本人名義ではなく、親や祖父母の名義のままとなっている場合もあります。
また、1軒の家が建てられている1カ所の土地であっても1筆(土地を表す単位)ではなく(=登記上複数に分かれている)、複数の地番(=土地に対し1筆ごとに付与される番号)が振られているケースもあります。
相続人調査
次に、亡くなった名義人の戸籍謄本などから、相続人が誰かを確認します。
相続の権利は実生活における関係性ではなく、続柄によって決まります。そのため、絶縁状態にあったきょうだいや、親族の誰も知らなかった隠し子など、思いもしなかった相続人の存在が明らかになるケースもあるようです。
必要な公的書類の収集
相続登記の対象となる不動産と相続人の確認を済ませたら、法務局へ申請する際の提出書類を市区町村役場などで入手します。
必要な書類には次のようなものがあります。
- 亡くなった名義人の出生から死亡に至るまでのすべての戸籍・除籍謄本
- 被相続人(=亡くなった名義人)の住民票除票または戸籍の附表
- 相続人全員の戸籍謄本
- 実際に相続する人の住民票および印鑑(認印で可)
- 相続する不動産の固定資産評価証明書(申請する年度のもの)
一般的な相続登記には登記済権利証や登記識別情報などは必要ありませんが、一部の相続の際には必要になる場合があります。
法務局に提出する書類
- 登記事項証明書
- 相続人全員の戸籍謄本または妙本
- 死亡した名義人の戸籍謄本・除籍謄本
- 死亡した名義人の住民票除票か戸籍の附表
- 相続する人の住民票・印鑑
- 印鑑登録証明書
- 固定資産税納税通知書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図(必須ではない)
- 登録免許税
- 委任状(代理で申請する場合は必要)
遺言書があるかないか、遺産分割するかしないかなどにより提出すべき書類は違ってきますので、事前に確認しておくとスムーズに進められます。
提出書類の作成
遺言書や法定相続によらない相続の場合は、相続人全員の実印の捺印のある遺産分割協議書、オンラインで申請する場合や被相続人の戸籍謄本の返却を希望する場合に必要な相続関係説明図などの提出書類を作成します。
これらの書類の作成が必要か否かはケースごとに異なりますので、これも事前に確認しておきましょう。
<参考>
遺言書がある場合・・・・遺言書
法定相続の場合・・・・・相続人全員の認印
法定相続以外の場合・・・相続人全員の印鑑証明書を添付した遺産分割協議書
法務局へ申請
上記書類が整い次第、相続登記対象の不動産を管轄する法務局で申請します。
その際、記入する登記申請書には、登録免許税分(評価額に基づいて算定)の収入印紙を貼り付けます。
相続登記は、窓口以外にも郵送やオンラインでの申請も可能です。
法務局に申請に行くのは代表者一人で問題ありませんが、その前に相続人全員での話し合いを行っておきましょう。
相続登記に掛かる費用とは
相続登記に掛かる必要最低限の費用にはどういったものがあるでしょうか。
自分で相続登記を行う場合
市区町村により変わってきますが、横浜市の例では次のような手数料や税金などが掛かってきます。
- 登記事項証明書(登記簿謄本):1通600円(※1)
- 戸籍謄本:1通450円
- 除籍謄本・改製原戸籍:1通750円(※2)
- 住民票・住民票除票:1通300円
- 印鑑登録証明書:1通250円
- 固定資産評価証明:土地1筆につき200円〜400円、家屋は固定資産課税台帳1枚につき300円
- 登録免許税:固定資産評価額の1000分の4(※3)
- そのほか交通費や郵送費など
※1 オンラインで申請して送付してもらう場合は1通500円、オンラインで申請し窓口で交付してもらう場合は1通480円。
※2 名義人の死亡により除籍となった戸籍謄本(=除籍謄本)や現行の戸籍法に改正される前の古い戸籍謄本(=改製原戸籍)が必要となる場合のみ。
※3 法定相続人以外が相続する場合は遺贈となり1000分の2。
司法書士に依頼する場合
専門家である司法書士に依頼する場合は、上記の費用に加えて報酬が発生します。
報酬額は各事務所により異なりますが、3000万円前後の不動産の相続登記を依頼する場合は、おおむね10万円程度です。
課税価格1000万円の登記申請を司法書士に依頼する場合は、1万5000円~5万円が相場です。
固定資産評価額の合計が1000万円の建物の手続きの全てを依頼する場合は3万円~11万円が相場です。
地域や司法書士によって大きな違いがあるため、しっかり確認しておきましょう。
まとめ
不動産の名義変更とは、登記簿に記載されている不動産の所有権の名義人を変更する手続きのことです。名義人の死亡時に行われる不動産の名義変更を特に「相続登記」と称し、手続きは、専門家である司法書士に依頼することも可能です。
相続登記の義務化は令和6年4月1日からですが、放置すれば不動産の売却などができないだけでなく、相続人の代替わりなどにより状況が複雑化したり、先代の登録免許税も支払うことになったりするなど、問題が生じることになります。令和6年には義務化されることも念頭に、相続登記は早めに、必ず行うようにしましょう。
相続登記に掛かる費用の大半は登録免許税と司法書士に依頼する場合の報酬にあなるので、費用を俯瞰しつつどのように対応するのかを決めていきましょう。
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