死亡後の手続き。年金の支給停止手続きの方法、流れについて
家族が亡くなると、まずは葬儀の準備に手一杯になりがちですが、それ以外にもさまざまな手続きや対応に追われます。
その一つが、亡くなった家族が年金の支給を受けていた場合の年金支給停止手続きです。
本記事では、年金支給停止手続きについて知っておきたいこと、手続き期限、必要な書類などの他、未支給年金の請求や準確定申告などについて解説します。
年金の支給停止手続きについて
亡くなられた家族の年金支給がすでに開始されていた場合、支給を停止するための手続きが必要です。
年金の支給停止手続きとは
公的年金の支給年数はあらかじめ決められておらず、受給者が生存中は継続して支給されます。逆にいえば、受給者が死亡した場合には受給の権利が消失し、支給も停止されます。
しかし、市区町村役場に死亡届を提出したからといって、それに連動して年金支給が自動的に停止されるわけではありません。そのため、別途必要となってくるのが年金の支給停止手続きです。
その手続きとして、日本年金機構に年金受給権者死亡届(報告書)を提出する必要があります。
ただし、故人のマイナンバーが収録されている場合は、原則としてこの「年金受給権者死亡届」を省略することができます。
なお、受給者が死亡しているにも関わらず、支給停止の手続きを取らず年金の受給を続けていた場合、多く受け取った年金を返還しなければならないことはもちろん、不正受給となり罪に問われる場合もあります。
手続きには故人の年金証書、死亡診断書のコピーなど死亡を証明する書類が必要で、年金事務所や年金相談センターで手続きを行います。
提出先・提出期限
年金の支給を停止するに当たっての必要書類提出先は、年金事務所または年金相談センターです。
故人が厚生年金受給者であった場合は死亡後10日以内に、国民年金受給者であった場合は14日以内に提出します。
葬儀の準備などで忙しくしていると手続きを忘れてしまいがちになるため、死亡届の提出と一緒に手続きを行ったり、葬儀後に速やかに手続きするなどして、できるだけ早めに済ませるようにしましょう。
必要な書類
年金の支給停止手続きに当たり提出が必要な書類は次の通りです。
年金受給者死亡届(報告書)
日本年金機構ホームページよりダウンロード可能です。
故人の年金証書
「年金受給者死亡届(報告書)」と併せて提出します。
故人の死亡の事実を明らかにできる書類
戸籍抄本、住民票除票、死亡診断書(または死体検案書)のコピーなど、故人の死亡の事実が分かる書類を、年金受給者死亡届(報告書)に添付します。
年金停止手続きを忘れてしまったら?
年金の支給停止手続きを忘れてしまい、期限内に行えなかった場合、どういった罰則があるのでしょうか。
不正受給となる
年金の支給停止手続きをしない限り、故人の口座に年金が振り込まれ続けることになります。
死亡した時点で受給する権利はなくなっているにも関わらずに受給している以上、受給者の死後に支給された年金については不正受給とみなされます。
国民年金の不正受給が判明すると、国民年金法(参考:国民年金法第百十一条)に基づいて3年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されるだけでなく、本来支給されるべきでなかった年金の一括返還が求められます。厚生年金の場合も同様です。
詐欺罪で逮捕される可能性がある
年金受給者の死亡を故意に隠して年金を受け取り続けるなどの悪質な不正受給が判明した場合、刑法の詐欺罪として逮捕される可能性があります。
国民年金法は、「偽りやその他不正な手段によって給付を受けた者は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金」という規定がありますが、厚生年金保険法には、不正受給した場合の具体的な罰則はありません。しかし、いずれも刑法が適用されることになるでしょう。
未支給年金の請求について
支給の停止手続きを取る一方で、未支給の年金の請求も行いましょう。
未支給年金とは
制度上、公的年金は偶数月の15日付での後払いの形で支給されます。
新規の年金送金処理が停止されるタイミングと、故人の年金受取口座が名義人死亡を受けて凍結されるタイミングとの兼ね合いによっては、支給されるべき年金が口座に振り込まれないという事態が生じます。
こうした「支給されるべきなのにまだ受け取れていない年金」を未支給年金と呼びます。
また、受給者の死後に新規送金処理は停止されますが、亡くなった月の分については死亡日に関わらずに当月分の全額支給が定められています
例えば、10月1日に亡くなった場合でも、10月分が全額支給されます。
したがって、仮に年金受取口座へ前月および前々月分の年金が問題なく振り込まれているとしても、未支給年金が必ず発生することになります。
未支給年金の請求方法
未支給年金は請求しなければ支給されませんので、年金を受給していた家族が亡くなった場合には忘れずに請求しましょう。
年金事務所、または年金相談センターに必要な書類一式を提出することにより請求できます。
必要な書類
未支給年金の請求に当たり提出が必要な書類は次の通りです。
未支給年金・未支払給付金請求書(複写帳票)
日本年金機構ホームページよりダウンロード可能です。
2部複写の様式になっており、ダウンロードした場合は2枚記入することになります。複写式用紙を希望する場合は、ねんきんダイヤルに電話連絡して送付を依頼します。
故人の年金証書
「未支給年金・未支払給付金請求書」と併せて提出します。
故人と請求者との関係が確認できる書類
戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写しなどを添付します。
故人と請求者とが生計を同じくしていた事実を確認できる書類
故人の住民票除票と、請求者の世帯全員の住民票を添付します。
「住民票上は故人と請求者の住所が異なっているが実際には同居し生計を同じくしていた」あるいは「別世帯ではあったが生計を同じくしていた」場合には、その事情を知る第三者(民生委員・家主など)による「生計同一関係に関する申立書」を添付します。書式は日本年金機構のホームページよりダウンロード可能です。
第三者の証明書を用意できない場合には、それに代わる書類の提出が必要です。
- 健康保険被保険者証:扶養関係を証明する
- 給与簿や賃金台帳など:給与上で扶養手当の対象となっていたことを証明する
- 源泉徴収票や課税(非課税)証明書など:税法上の扶養親族となっていたことを証明する
- 預貯金通帳など:定期的な送金の事実を証明する
上記に挙げたような第三者の証明書に代わる書類については、コピーを提出しても問題ありません。
未支給年金の受取口座が分かるもの
請求者が受取口座として指定する金融機関の預貯金通帳またはそのコピー(金融機関名・支店名・口座番号・口座名義人フリガナが記載された部分)を持参します。
故人と請求者が別世帯で生計が同一の場合については別の書類が必要になります。
未支給年金が受け取れる権利の順番について
未支給年金を請求できる人(請求権者)の範囲は法律で定められています。また、その請求権の順位も、故人との関係性により次のように決まっています。
配偶者
子供
父母
孫
祖父母
きょうだい
その他3親等内の親族(子の配偶者、配偶者の父母、孫の配偶者、きょうだいの配偶者、配偶者のきょうだい、配偶者の祖父母、曾孫、曾祖父母、曾孫の配偶者、甥、姪、おじ、おば、甥・姪の配偶者、おじ・おばの配偶者、配偶者の曾祖父母、配偶者の甥・姪、配偶者のおじ・おばなどの民法上における3親等内の親族も含む)
なお、上記の範囲に含まれる立場であっても、故人と生計を同じくしていなかった場合には請求できません。
準確定申告とは
故人が個人事業主、または公的年金などの収入が400万円を超えている場合は、準確定申告を行なわなければなりません。
準確定申告とは
年の途中に亡くなった人の確定申告(所得の申告と納税)を、相続人が代わりに行う手続きを準確定申告と呼びます。
手続きは相続人全員で行うことと定められているため、手続きの書類には相続人全員の署名が必要となります。
準確定申告の対象期間・申告期限
準確定申告の対象期間は1月1日から死亡日までで、その期間の所得について手続きを行います。
通常の確定申告は翌年1月1日から確定申告期限(原則として翌年3月15日)までの間にしなければなりませんが、準確定申告については相続開始を知った日の翌日から4カ月以内が申告と納税の期限です。
亡くなったのが1月1日から確定申告期限(原則として3月15日)までの期間中であり、かつ生前に死亡年の前年分の確定申告をまだ済ませていなかった場合には、前年分についても申告が必要です。
そういった場合の前年分の準確定申告の申告・納税期限も、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内です。
準確定申告が必要な場合
基本的には確定申告を故人に代わり行なうのが準確定申告ですので、準確定申告が必要なケースというのは故人に確定申告の必要性があった場合ということになります。
代表的なケースとして次のような状況が挙げられますが、その他のケースでも確定申告の必要性があったのであれば、準確定申告が必要となってきます。
・故人が個人事業主で事業所得があった場合
・給与が年2000万円を超えている場合
・給与・退職金以外の収入が年20万円以上ある人
・2カ所以上から給与を得ていた場合
・故人に公的年金などの収入が400万円を超えてあった場合
・故人に公的年金などによる雑所得以外の所得金額が20万円を超えてあった場合
・賃貸収入など不動産所得がある場合
・土地や建物などの売却収入があった場合
・生命保険や損害保険の一時金、満期金を受け取った人
・源泉所得税を徴収されていて、医療費控除などの所得控除を受ける場合
また、以下の場合では申告義務はありませんが、準確定申告を行うことで還付を受けることができる場合があります。
・源泉徴収額が多過ぎている所得があり、年末調整がまだ行われていなかった場合
・医療費が多く掛かっていて医療費控除を受ける場合
・配偶者控除、扶養控除、寄付金控除を受ける場合
年金の源泉徴収票
公的年金の場合、相続人が死亡届を提出すると、「公的年金等の源泉徴収票」が、準確定申告用の源泉徴収票として死亡届提出者に交付・郵送されます。この送付は原則自動的に行われます。
企業年金の場合、企業年金連合会に連絡をして年金受給停止手続きを行い、源泉徴収票を送付してもらう必要があります。
給与所得の源泉徴収票は従業員の死亡を受けて交付されますが、年金の源泉徴収票は年金支給停止手続きが行なわれてから準備されることになり、送付されるまでに2~3カ月ほどかかるケースもあります。
準確定申告の期限は4カ月以内ですので、あらかじめ発送時期の目安を確認しておくと安心でしょう。
公的年金の源泉徴収票が届くのが遅い場合については、年金事務所やねんきんダイヤルに、企業年金の場合は企業の年金基金に問い合わせます。
まとめ
故人が年金受給者であった場合、年金の支給停止手続きを行う必要があり、手続きを行なわないと、故人(=受給者)の年金の支給が継続して不正受給となってしまいます。
年金の支給停止手続きとは、具体的には「年金受給者死亡届(報告書)」の年金事務所または年金相談センターへの提出です。年金の支給停止手続きの期限は、厚生年金については死亡後10日以内、国民年金については死亡後14日以内となっているのですぐに対応しましょう
また、故人に受給権があったにもかかわらず生前に受け取れていない年金を未支給年金と呼び、生計を同じくしていた遺族・親族は請求ができるので確認を忘れないでください
大切な人が亡くなって、心身ともに余裕がないときに年金支給手続きは忘れてしまいがちです。期間内に手続きを済ませないと罪に問われたり、本来もらう権利のある年金を受け取ることができず損をしてしまったりすることもありますので、できる限り早めに対応するようにしてください。
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