国葬とは?国葬の歴史についても解説
安倍晋三元首相が死去したことで2022年9月27日に日本武道館で国葬が行われました。
初めて国葬という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、国葬とは何か、掛かる費用や祝日になるかどうかについて、日本で最後に国葬された人などを紹介します。
国葬について詳しく知りたい方は参考にしてください。
国葬とは?
まず、国葬について解説していきます。
その意味や対象になる人を押さえていきましょう。
国葬とはなに?
国葬とは国家の儀式の一つで、主に国費で行う葬儀のことを指します。
喪主は国家が務めることになります。
戦前は「国葬令」・戦後は「国民葬・国葬」
国葬は、戦前には「国葬令」という法律で規定されていましたが、戦後その法律が失効した現代においては「国民葬・国葬」と呼ばれるようになりました。
なお、国葬が制度としてできたのは明治時代です。
また、国民葬と国葬についても違いがあります。
国民葬は国費を使いますが、費用の一部は遺族が払うことになるのが一般的です。
しかし、国葬においては費用の全てに国費が使われることになります。
ただし、国民葬と国葬の儀式の流れについては大きな違いは見られません。
国葬の対象になる人は?
国葬の対象になるのは、国家に貢献した功労者です。
戦前は皇族・公爵レベル・軍人、現代においては総理大臣クラスの方が当てはまります。
なお、国家に貢献した全ての功労者において国葬が行われる訳ではなく、個別に判断した上で国葬を行うか決定されます。
また、天皇の葬儀は国葬と思われることがありますが「大喪の礼(たいそうのれい)」と言うものです。
普通の国葬とは種類が違うものとして扱われるので、混同して覚えないように気を付けましょう。
国葬の日は休み?費用も解説
国葬は国家の儀式となりますが、その日は休み・祝日にはなるのでしょうか。
国葬に掛かる大まかな費用についても詳しく知りたいところです。
ここでは、国葬の日は休み・祝日になるのか、また国葬の費用について紹介します。
国葬を行う日は休み・祝日になる?
戦前の国葬令では国葬の日は休日となりましたが、安倍晋三元首相の国葬では休日にはなりませんでした。
これまでの歴史の中で、昭和天皇の大喪の礼においては、全国民が喪に伏すという意味合いから、娯楽番組等の放送は一切されていませんでした。
国葬でいうと、1967年の吉田茂元首相の国葬の時は、公務員は半休、公立の学校も休日扱いになっていたそうです。
安倍晋三元首相の国葬では、全国民が喪に服すことを求めるものではないという観点から休日とはなりません。
なお、2022年9月27日に安倍晋三元首相の国葬が行われる理由については、日本武道館では唯一他のスケジュールが入っておらず空きがある日だったということが有力な情報と言われています。
国葬の費用は?
2000年以降の元内閣総理大臣の葬儀の費用はどのくらい掛かったのでしょうか。
1967年の吉田茂元首相の国葬のときに掛かった費用は約1810万円でした。
現代の価値に換算してみると約7692万円となります。
計算方法は「消費者物価指数÷1960年代の消費者物価指数」から導き出すことが可能です。
他にも、元首相の葬儀の費用について紹介します。
1975年の佐藤栄作元首相の国民葬では約1996万円掛かりました。
2000年の小渕恵三元首相の合同葬では、7555万円です。
2020年の中曽根康弘元首相の合同葬では、9643万円の費用が掛かりました。
なお、合同葬は内閣・政党も含む企業と遺族が費用を負担しています。
国葬をはじめ、国民葬、合同葬などさまざまな葬儀の形がありますが、費用に関しては年々増加傾向にあると言えます。
安倍晋三元首相の国葬では、当初の開催前の概算値では16億6000万円となる見込みが示されていましたが、12億4000万円となりました。
日本で最後の国葬とは?一覧で解説
ここでは、日本で最後の国葬について紹介します。国葬の歴史について詳しく知りたい方は参考にしてください。
日本で国葬が行われた人【一覧表】
ここでは、日本で国葬が行われた人を紹介します。
【戦前・線後】【国民葬・合同葬・国葬】に分けてまとめました。
【戦前】国葬令が行われた人
戦前に国葬令が行われた方は、時系列順で以下となります。
なお、国葬令が行われた時期は亡くなった年から推測しています。
- 大久保利通(政治家:1878年に国民葬が行われた)
- 岩倉具視(政治家・公家:1883年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 島津久光(政治家:1887年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 伊藤博文(藩閥政治家・首相:1909年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 山縣有朋(政治家・首相・陸軍軍人:1922年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 松方正義(政治家・財政家・首相:1924年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 東郷平八郎(海軍軍人・武士:1934年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 西園寺公望(政治家・首相・公家:1940年に国葬令に基づく国葬が行われた)
- 山本五十六(海軍軍人:1943年に国葬に基づく国葬令が行われた)
国民葬として執り行われた大久保利通の葬儀は「事実上の国葬」とも言われ、参列者は約1200人でした。
1926年に国葬令が制定され、日本で最初の国葬は特旨により営まれた岩倉具視の葬儀といわれています。戦前は主に政治家、軍人の方が国葬令の対象となる人と見られてきました。
【戦後】国民葬や合同葬が行われた人
戦後に国民葬や合同葬が行われた方は、時系列順で以下となります。
なお、国民葬や合同葬が行われた時期は亡くなった年から推測しています。
合同葬の中でも、内閣・自民党合同葬が多く見られました。
※戦前に「事実上の国葬」といわれる大隈重信(政治家・首相:1922年)の国民葬が行われている
- 幣原喜重郎(政治家・首相・外交官:1951年に衆議院葬が行われた)
- 佐藤栄作(政治家・首相:1975年に国民葬が行われた)
- 大平正芳(政治家・首相:1980年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 岸信介(政治家・首相:1987年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 三木武夫(政治家・首相:1988年に内閣・衆議院合同葬が行われた)
- 福田赳夫(政治家・首相:1995年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 小渕恵三(政治家・首相:2000年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 鈴木善幸(政治家・首相:2004年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 橋本龍太郎(政治家・首相:2006年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 宮澤喜一(政治家・首相・官僚:2007年に内閣・自民党合同葬が行われた)
- 中曽根康弘(政治家・首相:2020年に内閣・自民党合同葬が行われた)
政治家・首相経験者が内閣・自民党合同葬を行っていることが多いようです。
【戦後】国葬が行われた人
戦後に政治家・首相で初めて国葬が行われたのは吉田茂氏となります。
当時の首相であった佐藤栄作氏の強い要望もあり、国葬が行われることになりました。
安倍晋三元首相の国葬が行われたのは、35年ぶりとなります。
- 吉田茂(政治家・首相:1987年に国葬が行われた)
日本で最後の大喪の礼は「昭和天皇」
日本で最後の大喪の礼は、1989年2月24日に行われた昭和天皇の葬儀です。
なお、厳密には大喪の礼は国事行為たる皇室儀礼です。
昭和天皇の大喪の礼の参加者は、天皇、皇族、三権の長ら、招待国国家元首・首脳、国内参列者となりました。
まとめ
国葬とは国家の儀式の一つで主に国費で行う葬儀のことを指します。
戦前は「国葬令」戦後は「国民葬・国葬」と言います。
国葬が制度としてできたのは明治時代からで、日本の戦後で初めて国葬が営まれたのは、内閣総理大臣経験者の吉田茂氏です。
対象になる人は国家に貢献した功労者で、現代においては総理大臣クラスが当てはまります。戦後では政治家・首相経験者の方が内閣・自民党合同葬を行っています。
安倍晋三元首相の国葬が2022年9月27日に日本武道館で行われましたが、休み・祝日にはなりませんでした。
天皇の葬儀も国葬と思われがちですが、「大喪の礼」というものです。
普通の国葬とは種類が違うので、混合して覚えないように気を付けましょう。
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