お盆を迎えるための飾り、盆棚の正しい飾り方
「お盆」は先祖を供養するための仏教行事として、日本の暮らしの中にすっかり定着しています。
お盆飾りを飾ったことがある、あるいは習慣的に毎年飾っているという人も多いと思いますが、その詳細まで知っている方はあまりいないのではないでしょうか。
この記事では、お盆飾りのいわれや宗教的な意味、飾り方などについて解説します。
お盆飾りとは?
「お盆飾り」は、お盆にご先祖様の霊をお迎えするために、盆棚(ぼんだな)または精霊棚(しょうりょうだな)と呼ばれる祭壇を設けて行う飾り付けのことです。
仏壇の前や横、あるいは床の間などに二段〜三段の祭壇を準備して、ご先祖様を供養するための飾り付けを行います。近年ではスペースの問題や家庭の事情によって一段飾りにすることもあります。
お盆の期間
お盆の期間は地域によって違います。
東京や、神奈川の都市部などの地域では「新のお盆」といって、新暦の7月13日〜16日までがお盆の期間とされています。「東京盆」と呼ばれることもあります。
一方、北海道、東北、北陸、関西地方などでは「旧のお盆」あるいは「月遅れのお盆」と呼んで、8月13日〜16日までがお盆の期間としています。これは旧暦の7月中旬が、おおよそひと月ほど遅れて8月中旬となるためです。
新のお盆と時期の違いが生じた理由としては、農家にとって7月は繁忙期にあたるため農業の盛んな地方は、改暦後も旧暦のお盆の慣習が残ったことなど、諸説あります。
この他、旧暦のお盆を行う沖縄のような地域もあり、年によっては9月にお盆が来ることもあります。
また、静岡県の都市部や石川県金沢市では7月の新暦のお盆、東京都多摩地区では7月末のお盆など、お盆の時期は地域の慣習により実にさまざまです。
お盆飾りの意味
お盆飾りに用いられるものには、それぞれ意味があります。
ここでは、代表的な飾りの意味を見てみましょう。
盆提灯
盆提灯は浄土から帰ってくるご先祖様の霊が、迷うことなく家にたどり着けるように掲げる迎え火と言われています。
ほおずき(鬼灯)
盆提灯と一緒に提灯のような形と炎のような鮮やかな色を持つほおずきを飾るのも、ご先祖様の足元を照らす灯りになると考えられているからです。
精霊馬
キュウリやナスといった夏野菜で馬や牛をかたどったものが精霊馬です。本物の野菜を使うだけでなく、まこも(真菰)で作ることも多く、和紙などで作った細工品で代用することもあります。
精霊馬はご先祖様の乗り物とされ、浄土から現世へ帰ってくるときに早く戻れるように足の速い馬、浄土へ戻る際には名残を惜しんでゆっくり歩む牛を用意するとも言われています。
まこも、蓮の葉
お釈迦様は、まこも(真菰)で編んだござの上で、病人を治療したという言い伝えがあります。
蓮は極楽浄土に咲くと言われていて、その特徴からも仏教と関係の深い植物です。水の子を盛り付ける器や敷物として蓮の葉を使います。
そうめん
そうめんはご先祖様があの世からこの世へ帰ってくるときに手綱にしたり、あの世へ帰る際に荷物をまとめて背負う時に使う紐として使うという意味があります。
縁起を担ぐという意味もあり、幸せが長く続くようにという意味も込められています。
また地域によってはそうめんではなくうどんの場合もあります。
さやつきの豆
さやつきの豆は十六ササゲのことを指しています。
そうめんはお土産を包んで結わえますが、それを背負う時に使うのが十六ササゲです。
他にもあの世から来るときの依り代になるといわれる「キササゲの木」の代わりという意味もあります。
生花
お盆の際に飾る生花は「盆花(ぼんばな)」とも呼ばれ、盆棚やご先祖様、生きている人たちの心などを清める意味を持っています(お盆に欠かせない花として知られるみそはぎの花を指して「盆花」という場合もあります)。
季節の花や、亡くなった人が好きな花などを飾るとよいでしょう。
お盆飾りの飾り方とは?
お盆飾りは、家に戻るご先祖様の霊をもてなすために飾ります。
仏壇の前にお盆飾りを置く台を用意して、その上にまこもやござをかけます。
盆棚の四隅に葉のついた青竹を立て、竹の上部にしめ縄を張り、縄にはほおずきやみそはぎ、そうめんなどをつるします。
仏壇から位牌を盆棚の最上位に移し、故人の好物やお供え物を供えていきます。
特別なしきたりや「必ずこうでなくてはいけない」というルールはなく、飾り方や供えるものも宗派・地域によってさまざまです。菩提寺があれば盆棚の祀り方を教えてもらえる場合もあるので、確認してみましょう。
一般的な飾り方
盆棚を設置する
お供え物を置く祭壇は「盆棚」または「精霊棚(しょうりょうだな)」と呼ばれます。
仏壇の前、あるいは横に、二段か三段の盆棚を置くのが本式です。最上段には緞子(どんす)と呼ばれる敷物を敷いて最上段にはご先祖様の位牌や盆花をお供えし、二段目は精進料理のお膳や霊前灯(れいぜんとう)を主に飾ります。
盆提灯を置く
盆棚の両側に、家紋や植物などの紋様が描かれた盆提灯を置きます。つるすタイプと置くタイプがあるので、住宅事情や地域の慣習に合わせて選んでください。
まこもや蓮の葉を敷く
再下段の一段目(または小机)にまず、真菰(まこも)のござを敷きます。準備できない場合は、白い布でも問題ありません。
精霊馬などを置く
まこもの上に、精霊馬や、季節の野菜・果物、故人の好物などのお供え物を置けば基本的な盆飾りは完成です。蓮の葉を敷いてお供え物の器にすることもあります。
お盆飾りに必要なもの
一般的な盆飾りに必要なものをチェックリストにしました。
□ 生花(胡蝶蘭や蘭、菊、みそはぎなど)と花瓶
「みそはぎ」は漢字で「禊萩」と書き、別名で「精霊花」「盆花」などと呼ばれます。開花時期が旧暦のお盆ごろであることや、お盆に帰った仏様がみぞはぎの露で喉を潤したという説などから、お盆と関係が深い植物として知られています。
□ まこも、蓮の葉または敷物
□ 水の子、閼伽水(あかみず)
閼伽水は器に入れたきれいな水のことで、穢れを払う水と言われています。みぞはぎの束を添えて供えます。
水の子はナスとキュウリをさいの目に切り、洗ったお米と合わせて蓮の葉に盛り付けたものです。水の子を供えることには、「施餓鬼(せがき)」の意味合いがあります。施餓鬼とは、餓鬼道に落ちた無縁仏に供物を施し供養することです。
□ 精霊馬
□ そうめん
地域によってはそうめんではなくうどんを飾るところもあります。
□ 昆布
□ ほおずき
□ ご先祖様の位牌
□ 霊前灯
□ お菓子
□ 季節の野菜や果物
百味五果(ひゃくみごか)と呼ばれる場合もあり、故人が好きだったものをお供えします。
□ 故人の好物
□ 霊供膳(故人を供養するための精進料理の膳)
仏壇を使用する場合
本式の盆棚を設置するスペースがない場合は、仏壇の引き出しを利用するか、前に小机を置いて盆棚の代わりとします。
盆棚と同様に、まこものござなど敷物を敷き、お盆飾りを置いてください。
また、位牌、香炉、燭台、リンを仏壇から小机の上に移動します。位牌は中央の一番奥に安置し、香炉、燭台、リンは手前に置きます。空いたスペースにはお供え物を飾ります。小机の左右には盆提灯や生花を飾ります。
新盆(初盆)のお盆飾りについて
新盆(初盆)とは、故人の四十九日の後、初めて迎えるお盆のことです。
新盆(初盆)は亡くなった人が初めて自宅に帰ってくる重要なお盆であるとされ、僧侶を招いて「新盆法要」を行い、法要の後は会食の席をもうけるのが一般的です。
四十九日中にお盆を迎える場合は、翌年のお盆が新盆(初盆)となります。
新盆の際には、絵柄の入った盆提灯ではなく、「白提灯」を用意します。白提灯といっても、家紋や戒名を書くこともあるので、事前に菩提寺に確認しておきましょう。
初盆が済んだら、白提灯は送り火で燃やすか、納めてお焚き上げしてもらうのが一般的です。難しい場合はお酒や塩を振りかけてお清めをしてから処分しましょう。
こちらの記事でも新盆のやり方や準備について詳しく解説していますのであわせてご覧ください。
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お盆飾りを設置しておく期間
「新のお盆」「旧のお盆(月遅れのお盆)」「旧暦盆」ともに、盆入りまでに飾るものを用意して、盆入りの日の朝までに飾り付けを行います。
新盆で親戚がお参りに来る場合は、少し早めに飾り付けをしてもよいでしょう。とりわけ盆提灯は、前の月の上旬から飾ってもよいとされています。
新のお盆、旧のお盆ともに、13日〜16日までがお盆の期間とされています。12日までにお供え物などを盆棚に飾ったり、線香など必要なものを用意して、12日の夕方から13日の朝には盆飾りを整えましょう。
後片付けは、16日夜にご先祖様を見送った後、16日の夜または17日中に行います。
迎え火・送り火の習慣があれば、盆棚の飾りを終えた後、一般的には13日の夕方に迎え火を焚き、16日の夕方に送り火を焚いて、お盆飾りを片付けます。
お盆飾りの片付け方や処分方法について
お盆飾りの処分についての期限はありませんが、ご先祖様の送った後は早めに片付けるほうがよいと言われています。
新盆用の白提灯はその年限りでしか使えないのできちんと供養を行ってから焚き上げたり、菩提寺に持って行くなどで処分をしましょう。
白提灯以外の盆提灯、盆棚(小机)は、翌年以降も継続して使用するので、丁寧に手入れをして収納します。
まこもも、汚れが気にならない状態であれば、きれいに掃き清めてしっかりと乾燥させてから収納してください。
蓮の葉、精霊馬など、生の植物、野菜を用いたものは、塩で清めた後、白い紙に包んで処分します。
お供えものの食品については、できるだけ家族でいただくのが基本で、食べることが供養になると考えられています。
しかし、食べ切れない、食べることに抵抗があるという場合は、蓮の葉などと同じ方法で処分してもよいでしょう。
お供え物をレプリカで用意した場合は、保管しておけば翌年以降も使えるので保管しておきます。
地域の風習などで一度水をつけたものは、その年限りで処分した方がよいでしょう。
まとめ
お盆の時期は地域によって差があり、お盆飾りの内容や飾り方も、宗派、地域、さらにその家の伝統などによって異なります。
また、新盆(初盆)のみ白提灯を使用する点も覚えておきましょう。
共通するのは、お盆飾りの飾りやお供えには、一つひとつに意味があり、ご先祖様の霊を迎える家族の優しい気持ちが宿っているということです。
飾り方だけでなく、そのいわれや意味を知ることで、何気なく飾っていたもの、お供えしていたものに、より心をこめることができれば幸いです。
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