散骨とは?流れや注意点を解説
散骨という埋葬の形を知っていますか。遺骨をお墓に埋葬するのではなく、故人にゆかりのある場所などに赴き、粉末状にした遺骨をまくのが散骨です。
遺骨の埋葬や供養の方法が多様化する昨今、葬儀後に散骨を計画されている方は以前よりは多いのではないでしょうか。しかし、現実的には、実施率は1%にも満たないと言われています。新しい葬送であり、分からないことも多い散骨。
この記事では、滞りなく満足いく散骨を行うために知っておきたいことをまとめました。
散骨とは
散骨とは
散骨とは、火葬後粉末化した遺骨を、野山や海などにまく葬法のことをいいます。
いま現在でも遺骨は墓地に埋葬するのが一般的です。
しかし、墓石の建立には高い費用が掛かったり、世代を超えたお墓の承継が困難な世帯が増えたりして、墓じまいの数は急増しています。
散骨することで墓の管理も必要がなくなるため、経済的で合理的な葬法として散骨が注目を浴びています。
平成31年2月現在、散骨を取り締まる法律はありません。「墓地、埋葬等に関する法律(以下:「墓埋法」)」が制定された当初、散骨が一般的ではありませんでした。昨今、特に注目を集めて来ているとはいえ、散骨に関する法整備がなされていないことから、むやみな散骨がトラブルに発展する事例も出ています。
散骨は「節度」を持って行わなければならないとされています。例えば、観光地や自分以外の所有地、自治体が禁止するエリア他、海水浴場、漁場、港などは避けなければなりません。
個人でもできる?
散骨を事業としている業者はたくさんありますし、個人で散骨を行うことも不可能ではありません。
しかし、慣れない散骨をする上で、粉骨の大きさや他人に迷惑が掛からないようにするなど、よりきめの細かい節度と対応が求められます。
自宅の敷地内に散骨をする「自宅散骨」もありますが、「墓埋法」において、遺骨は”墓地以外への区域に埋蔵、埋葬を行ってはならない”とあります。また、2mm以下の粉骨をしなければならないことや、事前に自治体や市区町村の許可が必要で、推奨されていません。実際に行いたい場合には現実的には難しい実情があります。
そのため、散骨を行う際は民間業者やNPO法人に任せるとよいでしょう。
一般的専門業者に依頼すると散骨する場所や儀式を行ってくれることもあり、依頼することを含めて、散骨をよく検討することがお勧めです。
散骨を行う場所
散骨を直接的に取り締まる法律はありませんが、大きく分ければ「自分で行う場合」と「業者へ頼む場合」で方法や申請許可が必要な内容が異なります。「墓埋法」など関連法規に抵触することがないように、原則的に散骨は下記の場所のみでしか行えないと考えましょう。
- 海岸線から遠く離れた沖合
- 人のいない沿岸
- 墓地や霊園業者や宗教法人が行政から許可を受け、管理している墓所
- 自分の私有地(厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可が必要)
特に山林については、普段人気のないようなところであっても誰かの土地であることに変わりはありません。むやみに散骨を行わないようにしましょう。
以上のことを考慮すると、散骨を行う場所の選定は思いのほか難しいのです。
基本的には、民間業者やNPO法人など、散骨事業を行っている業者や団体に相談し、方法や選択肢などを検討するのがよいでしょう。
散骨を海で行うには
海へ散骨
散骨業者の多くは海洋散骨(海上散骨と呼ばれることもあります)を取り扱っています。海洋散骨の方がリスクが少ないからです。
海洋散骨には、次の委託散骨・合同散骨・個別散骨の三つの方法があります。
どのような違いがあるのか、詳しく紹介します。
委託散骨
散骨を業者に委託します。遺族は同行しません。
遺族が同行せずに業者が行ってくれるので、金銭面では一番リーズナブルにできます。しかし、最後まで見送りやお別れをしたい方には向かない方法です。
また散骨後には、散骨の証明写真や散骨実施証明書が郵送されるので、安心して任せることができます。
合同散骨
複数の遺族が一艘の船に乗り合わせて散骨します。
個別散骨
船を一艘借りて、その家の遺族だけで散骨を行います。
また、個人で散骨する人の中には沿岸で散骨する人もいますが、漁業関係者や他の利用者とのトラブルの原因となるため、お勧めはしません。
散骨業者も数が多く、自治体によって決まりがある場合があり、それらを確認しながら遵守した方法で行うことが望ましいとされて、います。
海へ散骨する際に懸念する法律
前述の通り、散骨を定める法律はいま現在はないため、散骨自体は違法でも合法でもない状態で、散骨に関する行政上の手続きもありません。
しかし、一部の自治体では散骨に対しての条例やガイドラインを定めている場合もあります。散骨を計画している場合はその場所に散骨に関する条例がないかどうか、確認が必要です。
海へ散骨する際の留意点
海への散骨でも、他者への迷惑には十分に配慮しましょう。法律がないからといって好き勝手にしていいというわけではありません。
考えられるトラブルには次のようなことが挙げられます。
- 漁場や養殖場の近くで散骨を行うことで風評被害を訴えらえれる
- 海水浴場などの近くで散骨を行うことによる観光地のイメージ低下を訴えられる
- 橋の上や自力でボートを漕いで散骨をすることで、事故につながる危険性が高まる
このような問題を起こさないためにもできるだけ実績のある業者に依頼することをお勧めします。
もしどうしても自分で行いたい場合は、以下のような点に注意しましょう。
- 海岸から遠く離れた沖合や人のいない沿岸で行う
- 観光地や海水浴場は避ける
- 漁場や港なども避けた方がいい
防波堤の先端からの散骨を行うと、民事トラブルになる可能性があるので注意が必要です。
また喪服の着用を避けるようにします。出航時は公共の船着き場やマリーナを使うため、葬儀以外の目的で利用する人もいます。
喪服だと他の利用者の気分を害する恐れがあるので、喪服の着用は避けましょう。このときは平服と言われる、黒っぽい服装を着用するのが望ましいです。
散骨を山で行うには
山へ散骨
山への散骨は海よりも難易度が高いとされています。
なぜなら、山林は必ず誰かが所有している土地(国有地、自治体の所有地、個人の私有地)であるためです。
所有者及び厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可を取っていれば問題ありませんが、現実的ではありません。
散骨業者の多くが海洋散骨を行っているのは、その方がトラブルのリスクが低いからなのです。
樹木葬との違い
山への散骨は樹木葬と混同されることが多いですが、似ているようで大きく異なります。
樹木葬とは、種類はいくつかありますが、遺骨を埋蔵し、樹木を用いた正式なお墓で、登記上「墓地」として認められた場所でしか行うことができません。
一方、山への散骨は遺骨を埋めるのではなく、地表にまくだけで手を合わせる礼拝施設を設けないことからお墓はない認識であることが一般的です。
樹木葬は「里山型」と「霊園型」に分けられます。「里山型」では大自然の山林の中で区画割りをして、その区画内に遺骨を埋葬して植樹します。原則として石碑やカロートなどは用いません。一方の「霊園型」は都市型霊園の中に作られた樹木葬墓地です。墓石の代わりに樹木などを植える場合が多いですが、遺骨はカロートの中に納めるタイプがほとんどです。
個別の区画に埋葬して植樹するタイプと、一つの大樹を利用者で共有し、その周りに設けられたカロートの中に納骨するタイプなどさまざまです。また、樹木葬の多くはやがて永代供養にすることを前提としています。
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山へ散骨する際に懸念する法律
散骨を取り締まる法律がない以上、散骨は法的にはグレーの状態です。つまり「いいとも悪いとも言えない状態」です。今後は禁止されるという危険性は大いにあります。地域住民のトラブルが原因で、独自に条例を設けている自治体(北海道長沼町など)もあります。「山」の中だとしても、あくまでも誰かの土地であるという認識は頭の中に入れておきましょう。
山へ散骨する際の留意点
海でも山でも同じことですが、基本的に2mm以下の粉骨が必要な場合が多いです。遺骨を白骨のまま土の中に埋めるなどは罪に問われます。
山林は国有地、自治体の所有地、個人の私有地になっている場合が大半です。
他人の所有地及び厚生労働省令で定めるところでは、市町村長の許可ない場合や、区域によっては散骨ができない場所で行ってしまうと違反となります。
これらの問題をクリアして、滞りなく故人を弔うためにも山への散骨実績のある業者に相談するのがよいでしょう。
散骨のメリット・デメリット
ここまで、海の散骨と山の散骨の概要について説明してきました。墓石のある埋葬方法と比較して、散骨にはメリットとデメリットがあります。
メリット
散骨のメリットとして以下の点が挙げられます。
お墓に掛かる費用を抑えられる
散骨することで、墓石の購入費が必要ありません。
遠方のお墓参りには高い交通費と時間がかかりますが、こうした費用や手間は抑えることができるでしょう。
散骨が可能な場所の範囲において、生前の故人や遺族の希望する地に散骨できます。
また散骨しながら思い入れのある地を巡る散骨旅行も人気があります。
デメリット
散骨におけるデメリットは以下の4点が挙げられます。
周囲の理解が難しい場合もある
散骨をする際は、周囲の人(特に親族)の了承を得る必要がありますが、新しいタイプの供養の方法であるため、親族から理解を得られない可能性もあるでしょう。
お参りする場所がない
散骨をしてしまうと、特定の場所に墓標を設けることができません。お墓参りをして故人を偲ぶことに慣れている人にとっては、精神的、心理的な満足が得難いかもしれません。
お墓を作ろうと思っても遺骨を回収できない
散骨を行ってしまうと、まいた遺骨を回収できないため、後にお墓を作ろうと思ってもできません。
散骨前に本当にお墓を作らないのかを周囲の人と相談しておきましょう。
注意しないとトラブルに巻き込まれる可能性がある
散骨する場所などに注意しなければなりません。山であれば所有者及び厚生労働省令で定めるところにより、市町村長に許可を取り、海では人の迷惑にならないようにするなど配慮も必要です。
デメリットの解決策
では、これらのデメリットはどのように解決できるのでしょうか。
故人の遺志として文面に残しておいてもらう
散骨を計画した場合、あらかじめ散骨を行う意思を親族などに伝え、理解を得ることが望ましいでしょう。
もし故人の遺志であるのなら、生前に文面に残しておいてもらうことも方法の一つです。故人の遺志であることが分かれば、理解を得やすくなるでしょう。
自宅に仏壇を設ける
手を合わせる場所がないことを不満に思うのであれば、手元供養として分骨する他、自宅に仏壇を設けるなどして、故人を偲ぶことができる環境を作ることでも、故人を弔うことができます。
また、分骨した一部をアクセサリーなどに加工するなども選択肢の一つです(必要な骨量などはサイズにもよるため、希望する場合は先に確認しておくとよいでしょう)。
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海や山が見える場所に行って故人を偲ぶ
散骨後にお墓を作りたいと思ってしまった場合、散骨した場所が眺められる場所に行き、故人を偲びましょう。
散骨実績のある業者に依頼する
散骨は個人でも行えないことはありませんが、散骨する場所が限定されていたりする他、マナーなどもあるので、経験のある散骨業者に依頼することでトラブルからも回避できます。
以上のような対応で、散骨によるデメリットも準備次第で解決できます。
散骨を計画する際に生じる問題を一つずつクリアして、希望通りの散骨ができるよう、専門の業者に事前に相談するのもよいでしょう。
散骨の流れ
申し込み~粉骨までの流れ
事前相談、生前申し込み
家族間で事前に話し合って意思疎通を図っておきます。どのような場所に散骨してほしいのかなど、希望があれば家族に伝えておくことも大切です。
また、遺骨の全てを散骨するのか、それとも一部を散骨するのかどうかについても話し合っておきます。生前に申し込みができる業者もありますので、事前にじっくりと時間をかけて業者を決めておくと安心です。
申し込み
散骨と言ってもさまざまなスタイルがあり、プランもいくつかある場合が多いです。海がよいのか、山がよいのか、散骨を委託するのか、家族が乗船して散骨するのか、どのような場所でどのようなプランにするのか希望を伝え、申し込みをします。
申し込みの際に必要な書類は、申込書、同意書、埋葬許可証、依頼者の身分証明書などです。業者に依頼する際にどのような書類が必要か確認して準備しましょう。
すでにお墓に埋葬してある遺骨を取り出して散骨する場合は、改葬許可証が必要です。埋葬している墓地で納骨証明書を発行してもらいます。次にその書類を墓地の所在地である自治体に提出して、改葬許可証をもらいます。
遺骨の受け渡し~粉骨
散骨をする前に、遺骨を2mm以下に粉骨しなければなりません。一般的には粉骨は業者が行ってくれますが、追加費用が必要な場合があります。その他、業者が受け取りに来る方法と郵送する方法があります。
粉骨作業を行ったあと、骨壷は業者が適切に処分してくれますが、そちらも確認しておくとよいでしょう。
散骨の当日の流れ
業者に散骨を委託する場合は、遺族がすべきことは特にはありません。当日の様子を写真にして渡してくれるところもあるでしょう。
業者に散骨を委託せず、家族が乗船して海で散骨する場合は以下のような流れになります。
出航(海の場合)
港から指定の船に乗船し、散骨する沖へ向けて出航します。
散骨式(献花、献水、黙祷など)
散骨する場所についたら、散骨式が始まります。散骨と前後して献花・献水、黙祷などを行います。
帰港
港へと戻ります。
散骨後の流れ
散骨証明書の受領
帰港後、散骨証明書を受領して、散骨に関連した一連の流れが終了します。散骨時の写真や散骨場所の写真、散骨位置の詳細を記した資料が提供されるサービスもあります。
メモリアルクルーズ
散骨後、散骨した場所に訪れるクルーズを実施している業者もあります。チャーターだけでなく、合同で訪れるプランもあります。
散骨を行う際に掛かる費用
それでは実際に散骨を行う際、どれくらいの費用が掛かるのでしょうか。
散骨を行う際に掛かる費用の相場
個人で散骨する場合
個人で散骨を行う場合、必要なのは粉骨費用のみです。粉骨費用は約3万円くらいが相場と言われています。なお、粉骨作業を業者に依頼する際、遺骨の受け取りは業者が直接受け取りにくる場合と、それが困難な場合には郵送する場合があります。
業者に散骨を委託する(委託散骨)
これは遺骨を業者に渡し、業者が粉骨から散骨までを行ってくれるサービスです。家族は散骨に同行しません。
散骨を業者が行ってくれるので、個人で散骨する場合より高く、約5万円くらいが相場になります。
複数の家族と合同で乗船する(合同散骨)
海に散骨する場合は合同乗船という方法があります。これは海洋散骨のところでも少し触れましたが、一つの船に複数の家族が乗船し沖に出て散骨するという方法です。
この場合は粉骨と乗船料が必要で、約15万円くらいになると言われています。また、家族ごとに人数制限があるので全員乗船できないこともあります。
船をチャーターする(個別散骨)
海でへの散骨でチャーター便を利用した場合は、一つの船に一家族のみが乗船して沖から散骨することになります。これには粉骨と船のチャーター代が含まれて、約20万~30万円くらいが相場と言われています。
費用の内訳
大まかに上記で説明したように、粉骨料と散骨地までの交通費(乗船料)他、散骨証明書の発行や散骨している時の写真は費用に含まれていることが一般的です。ただし、船上でセレモニーを行う場合や献花などのお供え物の費用は、別途かかることもありますので、業者に依頼する場合には確認しておくとよいでしょう。
個人で散骨を行う際の留意点
個人で散骨を行う際は以下の点について注意が必要です。
個人で散骨を行う場合は、遺骨をきちんと2mm以下の粉末状にして、遺骨と分からないようにする必要があります。なぜなら、粉骨しない状態で散骨すると法律にに抵触する可能性があるためです。
次に、散骨する場所を適切に選定する必要があります。散骨することで地域住民に迷惑を掛けてしまう可能性があるためです。前述の通り、海の場合は観光地や漁場、海水浴場は避けましょう。
特に漁場などの場合には民事訴訟に発展することもあるので注意が必要です。
また、定期船を利用してデッキから散骨する方もいるようですが、航路が漁場になっているだけでなく、他の乗客の目に触れやすいのでやめましょう。
山へ散骨する場合も、他人に迷惑を掛けることがないか、所有者及び厚生労働省令で定めるところにより、市町村長に許可が必要なことを含めてよく検討しましょう。
業者に依頼するとこれらの問題は比較的クリアになるので安心です。
散骨当日は喪服ではなく平服を着用し、一見して散骨しているとは分からない配慮が望ましいとされています。喪服を着用していると海洋散骨に行くことが想像でき、散骨しているのかと思われ他の利用者がよく思わないことがあるためです。
散骨した場所に花束を置いたり、お酒をまくこともありますが、ゴミになってしまう包装紙やビンなどは必ず持ち帰ります。
花束はそのままの形ではなく、ばらして海へ献花しましょう。
副葬品を含め、自然に還らないものを海へまいてしまうと、自然に悪影響を与え、海洋汚染の原因になってしまいますので、品物と量は最小限に留めましょう。
また、自治体によっては散骨を規制する条例やガイドラインを設けていることもあるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
近年、注目を集めつつある散骨という供養方法について説明しました。
お墓にかける手間や費用が不要なため、合理的で経済的な供養方法として注目を集めていますが、法整備がなされていない分、さまざまな面に注意しなくてはなりません。
今回の記事を参考にして、散骨を検討してみてはいかがでしょうか。
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