葬祭ディレクターの資格取得の審査を解説
葬祭ディレクターとは、葬祭業界で働く上で必要な知識や技能が身に付いていることを証明する民間資格です。
資格取得のための受験には、条件などが設けられているのでしょうか。
また、取得しておくと、どのようなメリットがあるのか気になります。
今回の記事では、葬祭ディレクターについて、審査内容や合否判定の基準などを紹介します。
葬祭ディレクターの資格を取得したいと考えている方は参考にしてください。
葬祭ディレクターとは?
まず、葬祭ディレクターの基本的な情報について解説していきます。
葬祭ディレクターとは?
葬祭ディレクターとは、厚生労働省が認定している民間資格の一つで、葬儀を行う上で必要な知識や技能が身に付いていることを証明する資格です。
1996年に葬祭業に従事する人の知識・技能の向上や、社会的地位向上を目指すことを目的に作られました。
葬祭ディレクターになるには、年1回開催されている「葬祭ディレクター技能審査」に合格する必要があります。
葬祭業界で働く人にお勧めの資格で、資格保有者は3万9000人を超えています(参考:葬祭ディレクター技能審査協会「過去の試験結果」)。
葬祭ディレクターの仕事と収入
葬祭ディレクターの仕事内容は、葬儀に関すること全般と言えます。
主な業務としては、遺体の搬送、遺族との打ち合わせ、葬儀の進行、火葬場の手配などが挙げられます。
葬祭ディレクターの平均年収ですが、厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」内のデータから約380万円くらいだと想定されます(葬儀社が当てはまる「その他サービス」の数値から推定)。
葬祭ディレクターの仕事内容は、一般的な葬儀業務と変わりはありません。また、業務独占資格ではないので、資格がなくても葬祭業に従事することはできます。
その一方で、葬祭ディレクターの資格があると、クライアントへの安心感や信頼度が上がります。
また、業務内容などによっては一般的な平均年収以上稼げる見込みもあります。
葬祭ディレクターには1級と2級がある
葬祭ディレクターには1級と2級の等級区分があります。
それぞれ、受験できる条件が異なるのでポイントをしっかり押さえていきましょう。
葬祭ディレクター技能審査を受験できる条件
ここでは、葬祭ディレクター技能審査を受験するための条件について紹介します。
葬祭ディレクター2級審査を受験できる条件
2級審査を受験するためには、葬祭実務の経験が2年以上必要になります。
葬祭ディレクター1級審査を受験できる条件
1級審査を受験するためには、葬祭実務の経験が5年以上必要になります。
また、2級審査に既に合格している人は、葬祭実務の経験が2年以上必要になります。
専門学校に通っている場合は?
葬祭ディレクターの審査に対応した専門学校に通っている場合、葬祭実務の経験がなくても、葬祭ディレクター技能審査協会が定めている葬祭教育機関のカリキュラムを修了しているなら受験資格を得ることができます。
派遣会社・代理店で働いている場合は?
葬祭ディレクターの試験を受験するには、葬祭実務の経験が必要となりますが、派遣会社・代理店で働いている場合はどうなるのでしょうか。
結論としては、事業主などによる証明書があれば実務経験になります。
また、証明を得られない場合、それに代わる在職証明書類があれば受験資格を得ることが可能です。
受験要項の葬祭実務の定義は、葬儀業務に従事してクライアントに接し、業務を恒常的に遂行していることを指します。
よって、勤労学生を除き、在学中のアルバイトのみで実務経験に含むことはできません。
派遣会社で働いている場合は、葬祭事業所からの「葬祭業務実務経験年数証明書(様式第2号)」と、派遣会社からの「派遣会社・代理店用 葬祭業務実務経験年数証明書(様式第3号)」が必要です。
代理店で働いている場合、業務委託元からの「葬祭業務実務経験年数証明書(様式第2号)」、葬祭事業所から「派遣会社・代理店用 葬祭業務実務経験年数証明書(様式第3号)」が必要です。
派遣会社・代理店で働いている場合でも、証明を得ることができれば、実務経験として扱うことが可能です。
なお、虚偽であったことが判明した場合、たとえ試験に合格していても、資格は取り消しとなるので注意してください。
葬祭ディレクター試験の受験手数料は?
審査の受験手数料は、1級、2級の等級区分によっても異なります。
1級の場合は5万5400円、2級の場合は3万9700円です。
また、学科試験または実技試験が免除になる方の受験手数料は以下となります。
1級学科試験のみの場合は8300円。
1級実技試験のみの場合は4万7100円。
2級学科試験のみの場合は8300円。
2級実技試験のみの場合は3万1400円。
※消費税含む
なお、振替手数料については申込者が負担することになります。
葬祭ディレクター試験の内容と時間
ここでは、葬祭ディレクター技能審査の試験の内容と時間について紹介します。
筆記試験
筆記試験では、葬儀に関する業務について正しく理解できているかを判定します。
なお、実技筆記試験においては、葬祭ディレクターの実践面において正確に理解できているかを判定します。
1級、2級の等級区分によっても出題数、解答時間が異なるので、しっかり押さえていきましょう。
葬祭ディレクター2級
2級の筆記試験は、学科試験と実技筆記試験で行われます。
学科試験の出題数は合計50問、出題形式は正誤判定方式と多肢選択方式、解答時間は30分間です。
実技筆記試験は、60問で解答時間は30分間となります。
学科試験は1問4点配点の200点満点です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも実技筆記試験は60点を占めています。
葬祭ディレクター1級
1級での筆記試験は、学科試験と実技筆記試験で行われます。
学科試験の出題数は合計100問、出題形式は正誤判定方式と多肢選択方式、解答時間は50分間です。
実技筆記試験は、60問で解答時間は30分間となります。
学科試験は1問2点配点の200点満点です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも実技筆記試験は60点を占めています。
幕張
自宅や寺院などでの式場設営の基礎技術となる式場装飾法「幕張装飾技法」の基礎能力が身に付いているかを審査します。
葬祭ディレクター2級
2級審査における幕張の実技試験の制限時間は7分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも幕張は60点を占めています。
葬祭ディレクター1級
1級審査における幕張の実技試験の制限時間は7分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも幕張は60点を占めています。
接遇
接遇の実技試験では、葬儀の担当者として遺族に接する基本的な応接能力が身に付いているかを審査します。
葬祭ディレクター2級
2級審査においての接遇の実技試験の制限時間は2分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも接遇は20点を占めています。
葬祭ディレクター1級
1級審査においての接遇の実技試験の制限時間は2分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも接遇は20点を占めています。
司会
司会の実技試験では、葬儀の司会進行アナウンスを行う上で基礎能力が身に付いているかを審査します。
葬祭ディレクター2級
2級審査における司会の実技試験の制限時間は4分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも司会は60点を占めています。
葬祭ディレクター1級
1級審査において司会の実技試験の制限時間は6分間です。
実技試験の合計点数は200点満点ですが、その中でも司会は60点を占めています。
葬祭ディレクター技能審査の合否について
葬祭ディレクター技能審査は、どのような基準に達すると合格できるのでしょうか。
以下、紹介します。
合格の基準は?
試験の合格の基準は、1級、2級ともに学科試験は70%以上の得点、実技試験は、四つの試験の点数を合計して70%以上を獲得することですが、四つの試験のいずれもが30%に達していることも条件になります。
一部に偏ることなく、万遍に得点を得る必要があります。
合否の通知が紙面で送られてくる
試験の合否の通知は、試験日より2カ月以内に書面で送られてきます。
なお、電話での合否に関する問い合わせは受け付けていません。
また、受験後に住所が変わった場合、必ず協会に連絡するようにしてください。
合格者はIDカードがもらえる
葬祭ディレクター技能審査に合格すると、IDカードをもらうことができます。
1級はゴールド、2級はシルバーのカードとなります。
IDカードは胸につけて業務を行えることから、クライアントからの信頼度も上がります。
一部合格とは?
葬祭ディレクター技能審査において、学科試験と実技試験、どちらか一方が基準点に達していれば一部合格とみなされます。
同じ等級の再受験を希望する場合、合格している科目が免除されます。
なお、受験を申請する時、受験申請書(様式第1号)の試験の免除欄に記載しないと、一部合格とは認められないので、記入漏れがないように気を付けてください。
葬祭ディレクター技能審査に合格するコツ
葬祭ディレクター技能審査に合格するためにはポイントがあります。
以下、そのコツについて紹介します。
専門学校での学びを大切にする
専門学校に通っている方は、学校での学びを大切にしてください。
特に、学科試験・実技筆記試験に合格する上で必要な知識を得ることができます。
分からない点についても気軽に先生に聞けるところにも心強さを感じます。
葬儀社での実務経験を活かす
試験会場を見ても葬儀社に勤務しながら試験を受ける方が多く感じます。
葬儀社で働いている方は、実務経験を活かすことができます。
仕事を通して行っている業務が、そのまま試験に出ることがあるのです。
ただし、試験に合格するには筆記試験の対策が必要です。
働きながら勉強する時間をいかに作れるかが合格するための鍵となります。
また、葬儀社にもよりますが、式場での葬儀が主となる場合、幕張を行う機会がありません。
一度も幕張を経験したことがない方は、幕張の練習を重点的にしましょう。
どちらかというと、専門学校に通う方と葬儀社で働く方では、実務経験がある葬儀社で働く方の方が、試験を有利に進めやすい印象があります。
筆記試験には「葬儀概論」と問題集で対策しよう
筆記試験に合格するためには『葬儀概論』(著・碑文谷 創/葬祭ディレクター技能審査協会)と問題集で対策するのがお勧めです。
葬儀概論は300ページを超える厚みで、葬儀に関することを重点的に学べます。間違って覚えていたところは、時間を置いて再度復習を行うようにしましょう。
まとめ
葬祭ディレクターは葬儀の業務に関する知識や技能が身に付いていることを証明する民間資格で、葬儀社で働く方が取得するとクライアントからの信頼度も上がるメリットがあります。
1級、2級と等級区分があり、それぞれで学科試験と実技試験(幕張、接遇、司会、実技筆記試験)が行われるので、受験する方は試験対策を行うことが大切です。
また、受験できる条件は1級では実務経験が5年以上、2級は実務経験が2年以上必要になります。ただし、2級審査に既に合格している方が1級審査に挑むには2級合格後の実務経験が2年以上必要になります。
合否の基準は、1級、2級ともに学科試験は70%以上の得点、実技試験は四つの試験の点数を合計して70%以上を獲得することです。
実技試験は、四つの試験のそれぞれ点数がいずれも30%ずつ達していることが条件となるので、一部偏ることなく満遍に得点を得る必要があります。
葬祭ディレクターの資格がなくても葬儀の仕事に従事することは可能です。しかし、この資格を保有していると、実務経験の年数や葬儀に関する知識や技能を有することの証明になります。クライアントに安心と信頼を与えることにも役立つでしょう。
葬祭業界で働く方は取得して損はない資格となるので、ぜひ対策を行い、試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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