直葬の費用はどれくらい?流れ・メリット・デメリットも解説
近年、葬儀に対する考え方も多様化し、核家族化や経済的な理由などの背景もあり、「直葬」と呼ばれる葬儀を執り行う人が増えてきています。シンプルなスタイルとなる直葬には、どのくらいの費用が掛かるのかを気になりませんか。
そこでこの記事では、直葬とは何か、直葬に掛かる費用と補助制度、流れ、メリット・デメリット、注意点について解説します。直葬を正しく理解していれば、安心して葬儀を執り行えるでしょう。
本文ポイント
・直葬とは、通夜・告別式を行わず、火葬のみを執り行う葬儀形態のこと
・直葬は短時間で終了し、費用負担も軽い
・直葬に掛かる費用の相場は、10万円~40万円程度
・直葬でも葬祭費の補助制度で給付金を受けることができる
・直葬は、家族・親族、菩提寺と充分に相談した上で選択する
直葬とは火葬のみを執り行う葬儀
直葬とは火葬式とも呼ばれます。通夜・告別式を行わず、主に遺体に対する処置のみを執り行う葬儀形態のことです。
家族・親族を中心に、特に故人と親しかった人たちだけが参集して営みますが、宗教対応をする場合としない場合(無宗教)があります。仏式の場合、火葬炉の前でお経をあげて済ませることもあります。
葬儀に関わる日数を短縮できる直葬は、遺族の経済(費用)面だけではなく、身体的・精神的な負担も少ないのが特徴になります。
直葬の費用負担が軽い理由
直葬は、なぜ遺族の経済的負担が少ないのでしょうか。
その理由には、費用負担が軽くなる理由として、「通夜・告別式を行わない」「食事の席を設けない」「参列者が少なく返礼品費も抑えられる」という3点が挙げられます。
通夜・告別式を行わない
直葬では、通夜・告別式を行わないため、自宅安置から自宅出棺することもできます。この場合、斎場ホールなど式場を借りなくても済みます。
読経も炉前で短時間ということになれば、お布施などの葬儀費用を勘案することが可能です。また祭壇なども不要で、葬儀社スタッフの人件費、また供花の費用も少なくて済みます。
食事の席を設けない
一般葬では、通夜振舞いや精進落としなど、飲食の接待が通例になりますが、直葬の場合、それらが原則不要なので、費用が抑えられます。
参列者が少なく返礼品費も抑えられる
直葬は、家族・親族を中心に、故人と親しかった人たちだけでの限られた参列形態になるので、会葬礼状や会葬返礼品の措置は行いません。その分の経費は抑えられるということです。
直葬に掛かる費用
直葬を執り行う際には、何にどれくらいの費用が掛かるのかと、気になっている方も多いのではないでしょうか。直葬に掛かる費用の相場、費用の内訳について解説します。また、追加で加算される項目についても説明します。
直葬に掛かる費用の相場
直葬の費用の相場は、地域や宗教対応にもよりますが、一般的には10万円~40万円程度と言われています。
葬儀社によって、火葬料金、搬送費用、ドライアイスなどの遺体保全費用、棺の費用、人件費など、プランに包括されている内容が大きく異なることもあります。別料金が必要になる場合などについて、充分な説明を受けておきましょう。特に火葬料金は、公営か民間かによって変わってきますし、その地域の住民か地域外かによっても大きく異なります。
葬儀費用に含まれる商品やサービス、見積もりをもらう際の注意点についてはこちらの記事をご参照ください。
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直葬に掛かる費用の内訳
直葬に掛かる費用の内訳は次の通りです。
- 火葬料金
公営火葬場の場合には指定地域の住民と地域外で異なりますが、無料〜7万円程度の料金設定です。
民営火葬場の場合には6万円〜15万円程度が火葬料金の相場です(火葬のランク有)。
※都内の民営火葬場の複数対象では2023年6月から、火葬1件あたり「燃料費特別付加火葬料」として追加費用が掛かるようになりました。金額についてはサーチャージ型の隔月の変動型料金のため変動する可能性があります。
- 搬送費用
逝去場所から遺体を移送するために寝台自動車を利用します。主に病院から自宅、または直接火葬場の安置室、あるいは葬儀社の保管室などに要する費用です。火葬場での安置・保管以外は、このほかに霊柩搬送費用が掛かります。
- 遺体の安置・保管費用
逝去後、24時間経過しないと火葬ができません(参考:「墓地、埋火葬に関する法律 第三条」)。遺体を自宅以外に安置し保管する場合、日ごとに保管料がかかります。
直葬といえども、希望する日時に火葬できるかどうか分かりません。混み具合などによって一週間前後待機しなければならないこともあります。
その場合、自宅以外では、「1泊」あたり3,000円~1万円前後の経費が掛かります。
冷蔵やドライアイスなどの日ごと処置にも経費が必要です。
- 棺の費用
棺は、材質やデザインによって大きく価格の差があります。一般的な平棺や布張棺などでも3万円~10万円前後です。これに納棺や遺体保全(死化粧)などの手数料が掛かることもあります。高級品の中には300万円位するものもあります。
- 収骨容器・祭祀壇などの費用
収骨容器(骨壷)も多種類あります。白瀬戸の普及品でも1万円前後はみておかなければなりません。また納骨まで遺骨や位牌を安置しておく台(後飾り段)などが必要になれば、それも費用として加算されます。
- スタッフ人件費
葬儀社のパッケージなどに含まれている場合もありますが、一般的には、搬送や安置に関わる人件費・納棺に関わる人件費・火葬場同行などの立ち合いの人件費が掛かります。見積書などに記載されていない場合は、事前に確認しておきます。
◆死亡届・火葬許可申請の代行手続きは、個人情報上の問題が多いので、ここでは触れていません。多くの葬儀社が代行していますが、それに対して料金を取っているところはほとんどありません。逆に、料金設定を設けている葬儀社は、他とは価値観の違う企業と見てもよいでしょう。悪徳企業を見分ける手段の一つになります。
直葬の費用に加算されるもの
直葬の費用で見落としや加算される可能性があるものは、以下の通りです。
- 保管期間が長いと保管料やドライアイス代が多大に加算される
- 遺体の搬送距離、時間帯、安置場所の状況(階上、車両導入ができない場所)に応じて、搬送費用が加算される
- 公営の火葬場を規定の住民以外の人が利用する場合は、火葬料金が大きく加算される
- 葬祭ホールなどの安置所で、付き添うための部屋などを希望する場合は料金が異なる
- 原則、冷蔵施設での保管の場合、随時面会に際して料金が発生することもある
直葬の費用への補助制度
直葬は、比較的費用を抑えられる葬儀形態ですが、それでも経済的に費用を準備するのが難しい場合があるかもしれません。ここからお葬式一般の葬祭への補助制度を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。もちろん「直葬」でも給付されます。
健康保険による補助
故人が国民健康保険の被保険者や、後期高齢者医療制度の加入者であった場合には、葬儀の翌日から2年以内に申請すれば「葬祭費」の支給が受けられます。
故人が全国健康保険協会(協会けんぽ)の被保険者であった場合には、「埋葬料」として5万円の範囲内で埋葬に要した費用が支給されます。また、被保険者の被扶養者が亡くなった場合には、「家族埋葬料」として5万円が支給されます。
経済的に困窮している場合
喪主が生活に困窮している場合には、生活保護法に基づいた「葬祭扶助制度」が利用できるケースがあります。申請が認められた場合には、直葬の費用を負担せずに執り行えます。
喪主が生活保護受給者ではなくても認められる場合があるため、まずは役所の窓口に相談してみましょう。
直葬の流れ
直葬は通夜・告別式を行わないため、葬儀の流れが一般葬とは異なります。あらかじめ全体の流れを把握しておけば、安心して直葬を進められるでしょう。
搬送・安置
故人が病院で亡くなると、短時間で病院を出なければなりません。移送先には自宅、葬儀社が所有する安置・保管施設、あるいは直接火葬場の遺体保管施設などがあります。行き先を心づもりして、できれば葬儀社と事前相談しておくことが最良です。
逝去時には寝台車を手配し、所定の搬送場所で安置・保管します。そのときドライアイスなどで冷却・保全処置も行います。
寝台車や霊柩車の費用については以下の記事で詳しく解説しています。
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納棺・出棺
納棺は安置・保管場所により、どの時点で行うかが異なります。火葬場などの冷蔵保全施設などに火葬まで預かってもらう場合には、逝去後病院を出る際に納棺をすることもあります。
葬儀社によっては、自宅と同じようにお布団に寝かせてから、納棺・保管をする場合もあります。死化粧や死装束はその納棺の際に行うことが多いようです。
出棺時のお別れなどでは、副葬品として故人とともに荼毘に付すものを納めます。
その際、火葬場から規制されている品物を入れないよう、葬儀社スタッフによく確認をしておくことが重要です。
霊柩車は火葬炉の近くに停車し、棺は係員の指示で施設内へ搬入されます。そうして炉前にて僧侶による読経と立合者のお焼香をすることもあります。(火葬式)
火葬式
火葬場にて短時間の宗教儀礼を果たすこともできます。これを「火葬式」と呼びます。
棺を炉内に納める直前に改めてお別れをしたり、炉に収まってから扉の前で礼拝や祭祀が行われます。極めて短時間の施行となり、仏式ならば読経・焼香をしまし、宗教によっては献花や玉串などで拝礼することもあります。いずれにしても「直葬」を前提としている場合、少人数での施行が原則です。
火葬後、遺骨を容器に収める「お骨上げ」を行って、埋葬許可証を受け取れば火葬場での全ての施行が終了となります。
直葬のメリット
直葬のメリットは、一般のお葬式に比べて簡易的であることから葬儀費用が抑えられることだけではありません。「費用負担の軽減」「身体的・精神的負担を軽減できる」「短時間で終了する」という3点について解説します。
費用負担が軽い
一般葬を執り行うと、100万円前後の費用が掛かると言われています。不特定多数に対しての訃報連絡することから、会葬者数も把握しにくく、そこに無駄な費用を見込まなければなりません。香典を授受する場合、会葬者が多いほど収入が増えますが、その分、接待や返礼にも費用が掛かります。
すでに解説していますが、直葬に掛かる費用の相場は10万円~40万円程度と言われています。その点、直葬ならば費用負担が軽く済みます。
喪主・遺族の身体的・精神的負担を軽減できる
喪主や遺族にとって負担になるのは、金銭面だけではありません。直葬の場合には、身体的・精神的負担を軽減できる点もメリットです。
一般葬では、会葬者へさまざまな対応をしなければなりません。挨拶や会食接待、またお礼状やその返礼、香典返しなど、葬儀後も何かと気ぜわしく身体も心もなかなか落ち着きません。
直葬であれば、近親者のみが参集するので気が楽ですし、祭壇などの装飾、お礼状、返礼も原則ありません。一番簡素なお見送りだと言えるでしょう。
短時間で終了する
直葬では、火葬場の混み具合にもよりますが、最短で24時間後には荼毘に付すことができます。宗教儀礼を行うとしても、原則、火葬場の炉前での簡易的な祭祀になります。この点で、通夜や告別式を営むお葬式から見ても2日間は日数が短縮できます。
ただし、火葬の予約とその待機日数が問題で、それによってどこまで短縮できるかは、そのときになってみないと分かりません。
直葬のデメリット
直葬にはデメリットも多々あることを理解しておきましょう。主な三つのデメリットを紹介しますので、直葬を考えるときの参考にしてください。
親族・知人・菩提寺からの理解を得にくい
一般的なお葬式とは異なる直葬は、「手厚さに欠けるのではないか」、「あまりにも簡略ではないか」など、周囲からの同意や理解を得られにくいこともあります。訃報連絡に制限をかけていることから、逝去の報を後で知った方々から、悔やまれ、非難されることもあります。
故人の生前意思や家族の考え方を折に触れ、「根回し」しておくことも必要です。
さらに、菩提寺にも直葬を執り行うことについて相談しておかなければなりません。通夜や告別式を行わない場合には、式次第などが変更されます。またいわゆる戒名などの授与に関しても、事前に相談をしておく必要があります。これらを無視すると菩提寺の境内墓地の場合、お墓への納骨が認められない場合も出てきます。
故人をゆっくりと偲べない
直葬では、火葬までの遺体の安置を自宅でする以外に、直接施設に保管してもらうことも多くあります。そのケースでは、故人と向き合う時間がほとんどなく、火葬直前の短時間しか対面できないことも多くあります。通夜や式がないのでゆっくり偲ぶことができるとは限りません。
保管が数日間を要する場合には、その間に悔いのないように施設を訪問し、対面しておくようにします。ただこれも制限があったり、時間帯によっては有料というところもあります。
参列できなかった人に対応しなければならない
直葬は限られた参列者のみで行われるので、近親者以外の親しかった友人、知人が弔問できない場合もあります。そのため、後日訃報を聞きつけた人が、不特定に自宅へ弔問に来る場合もあり、遺族はその対応に追われることになります。
直葬の注意点
一般葬とは異なる進行の直葬を執り行う際には、いくつか注意しなければならないことがあります。直葬を施行する場合の三つの注意点を紹介します。
家族・親族と相談しておく
お葬式の通念として、通夜があり、その翌日の葬儀・告別式という手順が伝統的にあります。身近な親族の中でも、そのような観念を根強く持っている人も多くいます。直葬にする理由などを具体的に伝え、理解してもらえるようにあらかじめの同意が必要になってきます。これらは全て生前の対応として済ませておくべきです。
菩提寺と相談しておく
菩提寺がない場合には問題はありませんが、菩提寺があり、しかもその境内にお墓を有して、そこに納骨を考えているような場合は、直葬を執り行うことについて事前の了承を得ておかなければなりません。
「直葬だからといって、読経や戒名授与は無視できません。それでは菩提寺のお墓に納骨できませんよ」などと言われた場合には、直葬といえども、しかるべき宗教対応を果たさなければなりません。中には、それがもとで「離檀」する人もいます。トラブルの原因になりやすいのでくれぐれも注意が必要です。
遺体の安置・保管場所の確保が必要である
どのようなお葬式でも、火葬までには数日間の日数がかかります。これは直葬でも同じで、直接火葬場へ搬送しても、火葬の順番によっては何日も待たされます。葬儀社での保管も同じですが、この間の「保管料」は無視できません。
火葬まで自宅安置が可能ならば、経費的な負担は少なくて済みますが、それでもドライアイスなどの保全費用は日数によってかさみます。初期対応としてどのような安置・保管にするかも心づもりが重要な課題です。
ご遺体の安置に必要な費用については以下の記事で詳しく取り上げていますのであわせてご覧ください。
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まとめ
直葬とは通夜・告別式を行わず、火葬のみを執り行う葬儀形態です。短時間で終了し、費用が抑えられるため、遺族の経済的、身体的、精神的負担が少ないのが特徴です。
直葬に掛かる費用の相場は10万円~40万円程度と言われていますが、事前に葬儀プランの内容をしっかりと確認しておくことをお勧めします。家族・親族、菩提寺と充分に相談し、遺体の安置・保管場所の目安をつけておきましょう。直葬施行には、そのための事前準備が大切です。
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