遺体搬送の費用や流れは?海外からの遺体搬送についても解説
病院で逝去された場合、最初の段階で家族が行うべきことの一つは、遺体搬送を依頼する業者の手配です。
亡くなる場所は日本国内とは限らず、出張先や旅行中など海外で亡くなって、飛行機で遺体搬送を行うようなケースもあります。
この遺体搬送は長距離になればなるほど高額になることが基本ですが、いったい搬送料金はどのように計算されるのでしょうか。また遺体搬送の流れの中で注意すべき点はあるのでしょうか。
今回は遺体搬送について、費用や流れなどを解説します。
遺体搬送とは?
遺体搬送とは、遺体を亡くなった場所から安置場所へと運ぶことです。主に遺体搬送用の車両を使用して、亡くなられた方を運ぶことを指します。車両以外では、船舶や航空機を使用して遺体搬送を行うケースもあります。
葬儀において遺体搬送を行う場面は主に2回です。
1. 病院など亡くなった場所から、自宅や葬儀社の霊安室などの安置先への遺体搬送
病院などで亡くなった場合、遺体は一時的に院内の霊安室に安置されますが、霊安室に遺体を安置できる時間は限られているため、できるだけ早く安置場所を決めて遺体搬送を行う必要があります。
2. 安置場所から葬儀を行う式場への遺体搬送
安置場所が葬祭ホールの施設内で、そのまま同じ葬祭ホールで葬儀を行う場合など、安置場所と葬儀の式場が同じ場所であるときは、この遺体搬送は行われません。
在宅で亡くなり、そのまま自宅で医師により死亡確認がなされて、安置も自宅にする場合には、これらの遺体搬送は行われません。
遺体搬送の費用
遺体搬送の費用は、搬送を行う手段によって変わってきます。
寝台車や霊柩車など車両による遺体搬送
搬送費用は走行距離数に応じた料金設定となっています。距離は「葬儀社などの車庫~病院などお迎えの場所~自宅などの搬送先の場所」の合計です。下記は車両による遺体離搬送費用の相場の一例です。
~10km未満:約1万円~2万円
40km以上~50km未満:約2万円~3万5000円
90km以上~100km未満:約3万5000円~6万円
時間帯や状況に応じ、上記の料金に加え、次の費用負担が生じる場合があります。
・深夜や早朝については割増料金が発生し、1割~2割程度が加算されます。
・家族側の事情で車両を待機させる場合、留置料金が加算されることがあります(例:30分ごとに2000円~3000円)。
・走行時間が1時間以上かかるような場合、遺体を保全するためにドライアイスを使用する場合があり、別途費用が掛かります(6千円~8千円が目安)。
・高速道路の通行料金は実費分が加算されます。
・その他、防水シーツや棺用布団、ドライアイスといった付帯品費用も別途必要になります(5000円~1万円程度)。
航空機など車両以外の搬送手段
航空機を使用する場合、日本国内であれば約20万円~30万円が相場です。船舶での遺体搬送については、東京都の港湾から伊豆諸島へ船舶を利用した場合の搬送費用で約15万円~25万円が相場です。
航空機や船舶についての上記の金額には、棺やドライアイスといった付帯品費用も含まれます。
長距離の搬送になる場合は
例えば、病院から自宅が近場で短い距離であれば寝台車などでの搬送が一般的ですが、500kmを超える距離を寝台車で搬送するとなると、長距離運転になるため、交代のドライバーも必要となり、人件費が2倍かかる場合もあります。
搬送距離が500㎞を超える場合には、空輸での遺体搬送の方が費用を抑えられる傾向があるので、そちらも検討してみるのがよいでしょう。空輸の場合、搬送距離500㎞で約25万円が相場となっています。
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遺体搬送の流れ
ここでは、病院で亡くなってから自宅に故人が安置されるまでの遺体搬送の流れを一例として紹介します。
安置されるまでの流れ
臨終
医師による死亡確認がされます。その後、故人に対して看護師によるエンゼルケア(点滴針の除去や体液漏れ防止などの死後処置)が行われます。
搬送先を決める
遺族は故人を病院からどこに搬送するかを決めます。搬送先は基本的に葬儀を行うまでの間、故人を安置する場所になります。主に自宅、葬儀社の霊安室、専門の遺体安置施設などが搬送先の候補です。
死亡診断書の発行
死因などが書かれた死亡診断書が病院から発行されるので、遺族はこれを受け取ります。
記載内容に間違いがあると修正に時間がかかり、その後の手続きにも影響するため、受け取った時点で故人の氏名や生年月日などに誤りがないか、充分に確認することが大事です。
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葬儀社や遺体搬送専門会社に連絡
遺族は故人を搬送してもらう業者の手配を行います。
一般的には、葬儀を依頼する葬儀社へ遺体搬送をお願いするケースが多いですが、この時点で依頼する葬儀社が決まっていない場合などでは、ひとまず遺体搬送だけを葬儀社や遺体搬送専門会社に依頼することも可能です。この場合は、手配する際に遺体搬送のみの依頼であることを最初に伝えるようにしましょう。
葬儀社に遺体搬送を手配する際は、以下の内容を伝えるようにします。
・故人の名前、性別、生年月日
・故人の遺体がある病院の住所、名前(似ている病院名もあるため、略さず正式名称を伝える)
・遺体の搬送先の住所(葬儀社や斎場に搬送する場合は、その場所の正式名称も伝える)
・手配した人物の名前、故人との続柄、連絡先
遺体を早急に搬送する必要がある場合には、死亡確認を行った病院が提携している葬儀社に搬送を依頼することもできるので、一度病院側に相談してみるとよいでしょう。
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搬送前準備
連絡した遺体搬送業者が到着するまでの間に、遺族は病室にある故人の私物などを整理しておきます。
入院期間が長くなるほど私物が多くなりがちですが、遺体搬送で故人が病院を出るときには遺族も一緒に動けるように病室は片付けておく必要があります。
また、搬送が長時間(1時間以上が目安)になると見込まれる場合、遺体搬送を行う業者が搬送前に故人に対してドライアイスの処置を行うことがあります。
遺体の搬送
故人を搬送用車両に乗せ、病院を出発します。故人を乗せた搬送用車両に、家族も同乗するかどうかは業者や状況によって対応がさまざまです。同乗は、業者の案内に従いましょう。
なお、家族が同乗する場合には、同乗する方が死亡診断書を持つようにします。家族が同乗しない場合には、死亡診断書は搬送用車両の運転手に預けることが一般的です。
通常、高速道路や有料道路も使用し、安全かつ最速で安置先に到着できるルートを使って搬送されます。
費用負担は増えますが、搬送ルートの途中で寄ってもらいたい場所がある場合には、搬送業者に希望を伝えれば可能な限り対応してもらえます。
例えば故人の生家、出身校、元勤め先など、思い入れのある場所の前を通ってから安置先へ向かうといったケースも見られます。
安置場所への安置
安置先に到着したら、故人の安置を行います。
費用の支払いについては、搬送と葬儀を同じ葬儀社に依頼した場合は、葬儀終了後に葬儀費用と合わせて支払いを行います。
搬送のみを依頼した場合は、搬送完了後に現金で精算するか、後日銀行振り込みなどで支払いを行います。
以上が病院で亡くなった場合の遺体搬送の流れです。
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海外からの遺体搬送の費用
海外から日本への遺体搬送に掛かる費用は、総額で約100万円~150万円が目安です。
ただし、死亡地の国ごとに関連法規が異なりますし、お金の価値や慣習、日本との距離も違い、海外で亡くなった場合の搬送費用は個々の状況により変わってきます。
海外からの遺体搬送は、基本的に航空機を利用することになります。上記の金額の主な内訳はおおむね次の通りです。
1.航空運賃:約15万円~50万円(アメリカからで25万円~30万円、アジア諸国からは15万円~25万円が目安)
2.航空機用棺、納棺、諸手続き代行、空港への搬送・搬入など:約50万円~70万円
3.エンバーミング費用(証明書発行料含む):約15万円~25万円
3のエンバーミング費用については、航空機ではドライアイスが使用できないため、遺体はエンバーミングという防腐処置かつ納棺を行ってから搬送することになります。
これら以外に、日本国内の空港に到着後、空港から自宅など安置先へ搬送するための費用は、別途必要になります。
また、航空機で搬送するときに使用した棺は、材質や大きさの面で日本の火葬場で対応できない場合が多く、日本国内の事情に適した棺への入れ替えが行われることが一般的です。
このため、使用済みの棺を解体処分する費用(約2万円~5万円)と、新しい棺の代金(約5万円~10万円)も別途発生することになります。
一方で、遺体の損傷が激しくエンバーミングを施せないといった場合には、遺体を日本に搬送せず、現地で火葬する場合もあります。
現地で火葬する場合は、現地の在外公館に故人の死亡届を提出し、火葬許可証と遺体証明書を発行してもらう必要があります。
海外からの遺体搬送の流れ
前述のように、死亡地の国ごとに関連法規や慣習が異なります。そのため海外からの遺体搬送に関して、流れや手続きが国によって異なる部分もありますが、おおむね次のような流れになります。
海外で亡くなった場合の主な流れ
外務省から死亡の連絡を受ける
海外で亡くなった場合、死亡情報が現地の警察や病院から在外公館(日本大使館や総領事館など)を経由して、外務省に入ります。この情報をもとに外務省が故人の家族へ死亡情報の連絡を行います。
死亡現地の在外公館に連絡や相談
まず死亡現地の在外公館に連絡し、今後の流れや手続きについて相談、確認を行います。海外で身内が亡くなった場合には、現地のことに詳しい在外公館が頼りになります。
実際の手続きも在外公館と多くのやり取りをすることになりますので、連絡先や担当者などすぐ分かるように控えておくとよいでしょう。
死亡現地への渡航
基本的に家族は死亡現地に行くことになります。死亡者の本人確認や、遺体搬送を含めた各種手続きなどを行うためです。
ただし費用的な事情や、死亡地が紛争地域で危険な場合など、家族が現地に行くことが困難な場合もあります。
また、死亡現地に故人が務めていた法人がある場合など、家族が行かなくてもよいとされるケースもあるため、死亡現地への渡航については在外公館に相談、確認を行います。
遺族がパスポートを保持していない場合でも、特例措置により数時間で発行されますが、航空券や宿泊手配は自身で行うか、旅行代理店などに依頼することが多いです。
要書類の入手その他手配
現地で下記の書類を入手します。
・死亡者本人のパスポート
・現地医師による死亡診断書(*和訳文も必要になります)
・在外公館が発行する埋葬許可証
・在外公館が発行する遺体証明書
・エンバーミング業者発行の防腐処理証明書
*和訳文を添付した死亡診断書は日本に帰国した後に死亡届を役所に提出する際に必要になります。
その他、遺体搬送を行うために空輸の予約を行い、日本の空港で受け入れを行う葬儀社の手配、打ち合わせも行っておきます。
死亡地によって書類の名称などで若干の差異が出てきますので、在外公館とのやりとりでしっかりと確認しておきましょう。
エンバーミングおよび納棺
防腐処置として、遺体のエンバーミングを行い、死亡現地の法令や航空会社の基準に適合する棺に故人を納めます。
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航空機で遺体搬送
通関の手続きを経て、棺に納められた故人が航空機に搬入され、空港を発ちます。
日本国内の空港に到着
手配しておいた葬儀社が空港で受け入れます。到着後、空輸のために使用された棺から日本国内仕様の棺へ納めます。
自宅などの安置先へ搬送
遺体搬送用車両で自宅などの安置先へ搬送します。その後、通常は葬儀社の代行になることが多いですが、死亡届を市町村区役所に提出する必要があります。
死亡届の提出期限は、戸籍法により定められていて海外で亡くなった場合には、その事実を知ったときから3カ月以内に死亡届を役所に提出しなければならないとされています。
然るべき理由なく提出期限を過ぎた場合、5万円以下の過料が課される場合があります。
遺体搬送を行う場合の注意点
遺体搬送に関して、主な注意点を解説します。
遺体搬送の主な注意点
遺体搬送車両の料金は車庫から計算される
搬送費用は走行距離数に応じた料金設定となっていて、距離は「葬儀社などの車庫~病院などのお迎えの場所~自宅などの搬送先」の合計です。
このため車庫から病院などのお迎え場所が遠方である場合、この間の走行距離分だけで料金が跳ね上がってしまいます。お迎え場所の近隣にある業者を手配した方が負担は少なくなります。
葬儀社の遺体搬送車両における注意点
葬儀社が遺族から料金を取って遺体を搬送する場合、国土交通大臣から一般貨物自動車運送事業の許可を受けた緑ナンバーの搬送車両である必要があります。
法律上、遺体は人ではなく貨物として扱われるため、仮に葬儀社が旅客自動車運送事業の許可を持っていたとしても、先述の許可がなければ遺体搬送を事業として行う事は法律違反となります。
また、遺体搬送を事業として行わない場合は白ナンバーの車両で遺体を搬送しても問題ないため、家族が亡くなった際に自家用車で遺体を搬送するのは法律違反に当たりません。
ですが、普段遺体の扱い方に慣れていない方が、自分たちだけで搬送するのは、体液漏れや遺体に傷をつけてしまうなどといったリスクが考えられますので、よほどの理由がなければ専門のスタッフのいる会社に搬送を依頼するのがよいでしょう。
搬送料金の内容、追加費用の有無を確認
遺体搬送業者の手配時に、搬送先が決まっていれば概算の搬送料金を確認できますし、インターネット上で料金表を公開している業者もあります。
ただし、これらの搬送料金以外に費用が発生する場合もありますので、追加費用の有無について確認しておくことがトラブル防止につながります。
追加料金となる可能性があるのは、深夜割増料金や防水シーツや棺布団代、枕飾り代などが該当します。
「遺体搬送を依頼する業者=葬儀を依頼する葬儀社」である必要はない
身内が亡くなった時点で依頼する葬儀社が決まっていない場合など、ひとまず搬送だけを業者に依頼する場合もあります。
中には病院や高齢者施設から業者を紹介してもらうケースもありますが、業者によっては搬送後に、そのまま葬儀の契約まで強引に押し進めようとするところもあるので、注意しましょう。
最初の連絡時点で「搬送のみの依頼」であることを強く伝えておくことが重要です。
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最後に
今回は遺体搬送についての費用や流れなどを解説してきましたが、いかがでしたか。遺体搬送は身内の方が亡くなった際に、最初の段階で行わなければならないことの一つです。
大切な方が亡くなり、いろいろな手配を冷静に行うことは難しいですが、流れや費用について知っておくと、実際に不幸が起こったときに、多少なりとも気持ちに余裕が出てくるのではないでしょうか。
今回の内容が、いざというときに皆さまの一助になれば幸いです。
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