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葬儀の知識

エンバーミングとは?手順や費用について解説

エンバーミングとは?手順や費用について解説

終活や葬儀の事前相談を行っていると「エンバーミング」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。

エンバーミングは「なるべく生前の姿のままお見送りをしてあげたい」「なるべく美しい状態で送ってあげたい」という遺族の希望を叶えます。

また外観の問題だけでなく、衛生面においてもエンバーミングを行う価値があります。今回は、このエンバーミングについて手順や費用など詳しく紹介します。

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エンバーミングとは?

エンバーミングとは遺体の保存、防腐、殺菌、修復を目的に、専門技術者であるエンバーマーが行う遺体に対する特殊な処置やその技術のことを言います。日本語では「死体防腐処理」や「遺体衛生保全」などと訳されます。

エンバーミングでは遺体の消毒・殺菌を行い、遺体の一部を切開し血液などの体液を排出するとともに保全液(防腐固定液など)を注入します。こうすることで、遺体を衛生的に保つことが可能になります。また、消化器官など体内の残存物除去や必要部位の修復、顔の処置なども行われます。

エンバーミングを行うことで得られる主なメリットは次の通りです。

1. 常温で遺体の長期保存が可能

ドライアイスや保冷庫を利用する必要がなくなります。夏場の暑い時期や、亡くなってから葬儀を行うまで長期間空いてしまう場合でも、腐敗が進むことなく、見た目もほとんど変わらずに遺体の保全が可能です。

2. 衛生的な安全確保

遺体はウイルスや雑菌に感染している可能性が有りますが、エンバーミングで感染リスクを回避することができます。これにより家族が故人の身体に、安心して触れることができるようになります。

3. 生前の姿に近い状態でお別れ

エンバーミングでは、遺体修復も行われます。例えば、痩せ細ってしまった顔をふっくらとした様子に再現するなど、生前に近い姿に修復します。それにより遺族の心情を和らげ、別れに向き合うサポートをすることができます。

また、修復レベルは状態にもよりますが、事故などで顔の一部が欠損してしまった場合でも、特殊技術を用いて修復がなされます。

エンバーミングが必要な場合とは?

エンバーミングが必要とされるケースには次のような状況や事情があります。

逝去日から葬儀までの日数が長くなる場合

悲しいことですが、人の身体は亡くなった時点から腐敗が始まり、見た目も劣化が進んでいきます。ドライアイスや保冷庫を使用しても全身を完全に凍結してしまうわけではありませんから、進行は遅くなるものの腐敗は進みます。

このため、亡くなってから葬儀を行うまで日にちが長く空いてしまう場合には、腐敗防止、見た目維持を目的としたエンバーミングが利用されます。

また、殺菌・洗浄などの処置を施すため、遺族や関係者の感染リスクを減らすことができます。

空輸で遺体搬送を行う

一般的に遺体搬送を行う際は、温度上昇による遺体の腐敗を避けるためにドライアイスを使用します。航空機を利用して遺体を移送する際は、遺体を保全するためにエンバーミングを施すことが一般的です。特に海外に移送する場合、エンバーミングを条件としている国が多いため、原則としてエンバーミングが必要になります。

例えば、出張や旅行などで海外に滞在していた日本人が現地で亡くなり、航空機を利用して遺体の状態で日本に帰国する場合や、海外の方が日本国内で亡くなり航空機を利用して他国に遺体の状態で送還する場合にはエンバーミングが必要です。

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元気だったころの姿で見送りたい

長い闘病生活で顔がやせ細ったり、点滴や薬剤の影響で膨張したりしてしまうことがあります。葬儀に参列される親族や友人などが抱いている生前のイメージとかけ離れてしまっていることも珍しくありません。

このようなときに、故人が元気だったころの姿で「お別れをさせてあげたい」という遺族の希望を叶えるため、エンバーミングが必要とされることがあります。

また、事故や災害などで亡くなり痛々しい姿になってしまった場合も、顔の処置や身体の修復を施し生前の姿に近づけることが、遺族の心情のケアにつながることもあります。

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エンバーミングとエンゼルケアの違い

亡くなった方の身体の処置に関して、エンバーミングと混同されがちなのが「エンゼルケア」です。ここでは、エンバーミングとエンゼルケアの違いについて解説します。

まずエンゼルケアとは、亡くなった方の身体の処置のことを言います。もともと医療業界において「死後処置」と呼ばれていたもので、エンゼルケアは病院の看護師によって行われることが一般的ですが、高齢者施設や自宅で亡くなった場合には、施設職員や葬儀社スタッフが行うこともあります。エンゼルケアを行うには専門の資格は不要なため、故人の家族でもエンゼルケアを行うことができます。

病院で行なわれているエンゼルケア処置の主な内容は次の通りです。

  • 点滴やチューブ類の処理、針刺跡の止血
  • 目や口を閉じる
  • 口腔、鼻腔のケア
  • 身体の清拭
  • 肌の乾燥対策(保湿)
  • 体液の漏れ防止対策
  • 寝間着(病院着)の着せ替え

その他、簡単なメイク、洗髪、髭剃りなどが行われる場合もあります。つまりエンゼルケアは、エンバーミングと比べると表面的に故人の姿を整えることが主な目的とされています。

死という形で退院をしますが、退院に当たって、亡くなった方は自分自身で身なりを整えること(セルフケア)ができないので、故人の尊厳を守るために病院職員が代わりに対応するという考え方でエンゼルケアは行われます。

一方、エンバーミングは表面的に故人の姿を整えますが、その処置範囲は体内にもおよび、遺体の保存、防腐、殺菌、修復を主な目的にしているという違いがあります。

さらにエンバーミングでは、遺体の小切開や薬液の注入といった処置も行われます。そのため、エンゼルケアとは違ってエンバーミングを行うには専門の資格が必要になるのです。

エンバーミングを行うにあたっては遺族に対して処置内容を説明し、書面による同意を得なければなりません。

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エンバーミングの手順

エンバーミングを依頼する場合、どのような手順で進んでいくのでしょうか。ここではエンバーミングの流れを見ていきます。

①必要書類の提出

エンバーミング施設では、一般的に「エンバーミング依頼書(同意書)」と、「死亡診断書(死体検案書)」の提出が求められます。

併せて、故人の生前の写真が用意してあると、顔の修復や死化粧の際、エンバーマーが参考にすることができるため、より遺族の方々が持っているイメージに近い施術が期待できます。

②搬送

自宅など故人を安置している場所から、エンバーミング施設に搬送します。

③洗浄および消毒

身体の状態を確認し、身体の表面的な洗浄や消毒、口腔などの殺菌が行われます。

④衛生保全(洗髪や洗顔など)

洗髪、洗顔、保湿剤の塗布が行われ、顔の表情や顔の周囲が整えられます。遺族の希望や必要に応じて髭剃りや産毛剃りも行われます。

⑤体内の洗浄および防腐保全処置

身体の一部が切開され、血液など体液を排出し、保全液(防腐固定液など)が体内に注入されます。基本的に鎖骨の下と腹部を切開しますが、身体の状態によっては切開する場所は変わります。それぞれ、おおよそ1㎝~1.5㎝の小切開です。

保全液は全身を循環し、最終的には血液など体液と保全液を全て置換していきます。これにより体内の清浄や保全を確保します。

また薬剤に配合される色素によって、顔の表情に血色が戻ります。

⑥消化器官や呼吸器官の残置物除去

食道、胃、腸内など消化器官に残っている水分、食物、呼吸器官の痰など残置物を吸引、除去したのち、防腐液を注入します。

⑦縫合、修復、洗浄

体液の排出や保全液の注入の際、切開した箇所を縫合し修復します。再度、身体全体の洗浄が行われます。事故などで顔や身体に損傷している部位があるときには、ここで修復もなされます。

⑧衣装の着付け、整髪

遺族指定の衣装や宗旨にのっとった装束を故人に着せます。また着付け後、あらためて顔の表情を整え、整髪を行います。

⑨死化粧、納棺

遺族の希望により死化粧や納棺を行います。死化粧では、亡くなった方専用に作られたプロ仕様の化粧品が使われます。納棺についてはエンバーミング施設では行わず、自宅など安置先へ搬送してから、葬儀社立ち合いのもとで別途行われる場合もあります。

⑩搬送

故人をエンバーミング施設から自宅などの安置先へ搬送します。

以上がエンバーミングの流れです。故人の身体の状態にもよりますが、エンバーミング自体は3~4時間かけて行われます。

自宅に故人を安置していた場合、エンバーミング施設までの距離によっても前後するものの、故人が自宅を出発して、エンバーミングが完了し再び自宅に戻ってくるまで半日~1日を要することになります。

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エンバーミングの費用

エンバーミングに興味を持たれている方は、費用面も気になるところではないでしょうか。ここではエンバーミングの費用に関して説明します。

エンバーミング費用の相場

エンバーミング費用は、約15万円~25万円が相場と言われています。納棺師が行う納棺の費用相場は約8万円~10万円と言われているので、それと比較するとエンバーミングの費用は高い傾向にあることが分かります。さらに、この費用はエンバーミングそのものの費用であり、エンバーミング施設までの搬送料金(往復分)や、業者が用意する衣装や棺代は別途必要になります。

遺体の状態によっても金額は変わります。事故などで損傷が激しく、さらに遺族が生前の姿に復元を望むような場合は、その程度によって費用が掛かることもあります。

ドライアイスや保冷庫を使用した場合と比較

エンバーミングを行わない場合には、ドライアイスや保冷庫を使用して故人の身体を保全することになります。亡くなってから葬儀を行うまでに10日以上空いてしまうような場合、エンバーミングを行った方が費用的な負担が少なく済むようです。

ドライアイス1日分の料金相場は約8000円~1万円なので、10日間で約10万円ほど必要になります。

加えて葬儀社の霊安室などに安置を依頼した場合には、やはり1日1万円程度の安置料が掛かってきますので、こちらも10日間で約10万円ほどの負担が発生します。

以上のことから、故人の身体の保全という目的が主となるエンバーミングですが、費用面から見ても検討した方がよいケースがあります。

最後に

今回は、エンバーミングについて手順や費用などを詳しく解説しましたが、いかがでしたか。

費用の面や、故人の身体を切開することなどの理由でエンバーミングに抵抗を感じる方もいますが、実際にエンバーミングを利用された遺族の方々の満足度はとても高いようです。

葬儀はやり直しができません。最後に故人に対して行えることの一つとして、また故人との最後のお別れを大切に過ごすために、エンバーミングは前向きに検討してもよいのではないでしょうか。

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